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 未だ大企業が抜け出せない官僚主義。変化の激しい時代にあって、イノベーションの創発によって成長し続ける企業へと進化するには、どんな組織改革が必要なのか? 本連載では、世界で最も影響力のある経営思想家の1人、ロンドンビジネススクール客員教授ゲイリー・ハメル氏による『ヒューマノクラシー ――「人」が中心の組織をつくる』(ゲイリー・ハメル、ミケーレ・ザニーニ著/英治出版)から、内容の一部を抜粋・再編集。

 第2回は、ポスト官僚主義の組織づくりに取り組むパイオニア企業の1社、米鉄鋼メーカーのニューコアを紹介。その先進性に迫る。

<連載ラインアップ>
第1回 「人間らしさ」が失われると、なぜ組織は病んでしまうのか?
■第2回 高収益体質で業界トップを独走、米国鉄鋼大手・ニューコアの企業文化とは?(本稿)
第3回 業界平均より25%高い報酬を実現、米ニューコアの独自のボーナス制とは?
第4回 8万人の「起業家集団」! 中国家電大手・ハイアールの「人単合一」とは?
第5回 ハイアールの成長と変革の源泉、「リーディング・ターゲット」とは何か?
第6回 ライバルの足をすくったことは? 官僚主義的思考から脱却する12の問いかけ

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ニューコアという企業

 あなたは製鋼所のなかに入ったことがあるだろうか。

 もしあるなら、そこで働く人たちが究極のブルーカラーと呼ばれる理由がわかるだろう。電気炉では、オペレーターが耐熱服とフェイスシールドを身にまとい、12メートルの大釡を慎重に操作する。

 そのなかには溶けた金属が入っているが、それは数百トンの鉄スクラップに175メガワットの電気ショックを30分間与えてできたものだ。

 その近くにある鋳造機はスクールバスほどの大きさの機械で、溶けた金属をさまざまな型に流し込んでいく。作業員たちは、溶けた金属の輝くオレンジ色の流れを集中して見つめ、安定的に流れるように、時折ノズルを調整し、油を差す。

 鉄鋼労働者たちが巨大な機械を相手にしているのを見たら、彼らの仕事には知力よりも体力が必要だと思うかもしれない。労働統計局のデータも、その見方を裏づけている。

 鉄鋼労働者として働くには、クリエイティビティや分析力よりも、体力と器用さがずっと重要だと考えられている[図表4-1]。製鋼所によっては、その通りかもしれない。だが、アメリカ最大の鉄鋼メーカー、ニューコアではそんなことはない。

 ニューコアでは、進歩をもたらすのは現場の従業員の専門性と自律性だ。例として、アーカンソー州ブライスビルにある同社の製鋼所で、電気炉を動かすチームを見てみよう。このチームは、ニューヨークのワン・ワールド・トレード・センターを支えるI形梁(あいがたばり)などを製造している。