SOMPOひまわり生命保険 執行役員 チーフ・デジタル・オフィサー デジタル・データ企画部長の西川素之氏(撮影:今祥雄)

 国内の大手生命保険会社として、約470万の保険契約を保有するSOMPOひまわり生命。同社は今「健康応援企業」への変革を目指し、保険(Insurance)と健康増進(Healthcare)を組み合わせた「インシュアヘルス(Insurhealth)」という新しい保険のあり方を打ち出している。「保険+健康」サービスを提供するなかでデータやAIをどう活用していき、どのような生命保険の未来像を描いているのか。DX推進強化のミッションを追うCDO(チーフ・デジタル・オフィサー)で、2022年10月に新設されたデジタル・データ企画部の部長も務める、西川素之氏に話を聞いた。

「保障+健康増進」をサービスの基本に据える

――SOMPOひまわり生命は、従来の生命保険会社が提供してきた保障以外の領域にサービスを拡大する「インシュアヘルス」に力を入れています。なぜでしょうか。

西川 素之/SOMPOひまわり生命保険 執行役員 CDO(チーフ・デジタル・オフィサー) デジタル・データ企画部長

1995年アイ・エヌ・エイ生命保険(当時)入社。代理店営業チャネル担当を務めた後、ダイレクトチャネルのビジネスを約12年間担当。その後本社で約7年、事業企画やCX部門で新ビジネスの立ち上げに携わる。静岡統括部長を経て、2022年より現職。

西川素之氏(以下敬称略) 日本人の健康寿命と平均寿命には、約10年のギャップが存在します。つまり、亡くなる前の約10年は何らかの病気を抱えているかたが非常に多いという課題を認識しています。

 このギャップを解消し、お客さまの健康を応援して健康寿命を延伸させ、健やかで幸せな人生を送っていただくことを支援するために、当社では従来からある保険サービスと健康サービスを一体的に提供しています。これが「インシュアヘルス」です。

 SOMPOグループは、企業理念として安心・安全・健康のテーマパークを作り、それによって、あらゆる人が健康で豊かに暮らしていける社会を実現することを掲げています。そのうち当社は、安心だけでなく、健康のフロントランナーとして健康の役割も担っています。グループの理念が変わらない限り、当社の基本方針が揺らぐこともありません。インシュアヘルスは、当社がお客さまに提供する価値であり、また、事業の根幹でもあるため、全社が一丸となって覚悟を持って取り組んでいます。

 当社は国内で、約40年間生命保険事業を続けており、現在、約470万件の保有契約をいただいています。インシュアヘルスを、世の中に提供を開始したのは2018年からですが、それからわずか6年弱で、保有470万件のうち、130万件がインシュアヘルスになっています。

 事実、当社の営業の仕事は、保険を売ることから、「インシュアヘルスをお客さまに提供すること」であると認識されています。また、開発においても「お客さまの健康応援になっているのか」を判断基準にしています。

――健康増進のサービスに取り組む保険会社は増えています。それらとインシュアヘルスの違いは何でしょうか。

西川 当社が提供するインシュアヘルスは、単に「保険+健康サービス」をセットで提供するだけではありません。保険と健康サービスが仕組みとしてシームレスにつながっていることが特徴です。例えば、BMIを改善するための健康増進活動を支援するサービスを使っていただき、その結果、BMIを改善することに成功したお客さまは、保険料の割引を受けられる「健康チャレンジ」という仕組みがあります。このように、健康増進活動によって健康になった成果が、保険サービスとしてフィードバックされる仕組みが特徴なのです。

 この「健康チャレンジ」に成功したお客さまは、他のお客さまと比べると、入院確率が半減するということがデータとして明確になりました。このようにインシュアヘルスがお客さまの健康のお役に立っているという実績も特徴の一つだと考えています。

 日本の生命保険の世帯加入率は9割を超えており、お客さまは基本的になんらかの保険に入っている状況です。毎月払っている保険料が安くなるという直接的なインセンティブは、お客さまの健康活動のモチベーション維持にもつながりますし、多くの保険商品の中から当社を選んでいただく際の強力なメリットになります。

 将来的には、保険料そのものをお客さまごとにパーソナライズすることも考えられます。健康増進に取り組んでいる人は、そうでない人と比べて病気になるリスクが低くなる可能性があります。現在の保険料率は、性別、年齢、過去の病歴でほぼ決まっているのですが、これに予防医療の視点を加えることができれば、個々のお客さまの状態、今の健康活動の状態に合わせた料率を採り入れることができるはずです。

 今後、そうしたサービスを実現するために、必要なデータの量や期間を、私の部門で検討しているところです。

――顧客の活動データを収集することは、顧客と保険会社の接点を増やすことになりますか。

西川 生命保険は、加入期間が数十年から一生涯にわたるものであり、その間、お客さまとの接点が希薄になる場合もあります。接点がない、希薄になる長い「オフ」の時間を、人間の根源的な欲求である健康を支えるお手伝いをする時間に変えることで、お客さまとの新たな接点を作ることができます。

 保険代理店の営業の方からも、「ひまわり生命のインシュアヘルスは、定期的にお客さまと会うきっかけが生まれる。そこがいい」というご評価もいただいています。これは大きな変革だと思っています。