金融サービスのデジタル化・オンライン化に伴って、オンライン生命保険市場の成長可能性は、今後ますます拡大していくと考えられる。そんな中、ネット専業の生命保険会社として顧客視点の新たな保険を展開してきたライフネット生命では、「顧客体験の革新」を重点領域の1つとして掲げ、CXへの投資を軸とした成長戦略を描いている。同社が見据える未来と、その具体的な取り組み事例について、代表取締役社長の森亮介氏が語る。

※本コンテンツは、2022年12月1日(木)に開催されたJBpress主催/JDIR「第15回 DXフォーラム DAY2」の特別講演3「ライフネット生命の成長戦略とCX」の内容を採録したものです。

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変化する生命保険業界で、ライフネット生命が掲げる4つの顧客提供価値

 外資系証券会社を経て10年前にライフネット生命保険に入社し、2018年から代表取締役社長を務める森亮介氏。同氏は、まず日本の生命保険業界の特徴を3点挙げる。年間の保険料約33兆円、1世帯あたりの年間平均払込金額約37万円という巨大市場であること。保険会社と消費者の間には、大きな情報格差があること。そして近年フィンテックが加速し、さまざまな金融取引がスマートフォン上で行えるようになったことだ。

「大きな変革期にある今だからこそ、生命保険を営業職員が『売るもの』から、一人一人の生活者が『買うもの』へと切り替えていく、その環境を整えることが当社の使命の1つであると考えています」と語る森氏。同社の顧客提供価値は、「​正直に わかりやすく、安くて、便利に。」という4つで表すことができるという。

 まず「正直に」は、徹底した情報開示だ。同社は業界で初めて、保険料の構成や内訳を開示した。インターネットでさまざまな情報が入手できる現代において、商品の透明性はエンドユーザーの意思決定の大きな材料になると考えるからだ。次の「わかりやすく」は、エンドユーザーに分かりやすい商品を開発していくことだ。「売ること」を第一に想定してつくられた従来の商品は、エンドユーザーには難しく理解しづらいことが多いが、同社の商品は、全て保証性に特化してシンプルで分かりやすくなっている。

 そして3点目の「安くて」は、オンラインの金融サービスならではの低い価格設定だ。高い事業効率を背景に、万が一の場合の保険金額は変えず、毎月の保険料を抑えられることは、オンライン専業の生命保険会社の強みの1つである。

 最後に「便利に」について、森氏は上図を示しながら「CX(カスタマー・エクスぺリエンス)への投資にもつながる大きな柱」と説明した。エンドユーザーが生命保険を検討する段階から、実際の加入手続き、加入後、そして保険金や給付金の請求の手続きという各フェーズを、一貫してスマートフォンなどでストレスなくできる顧客体験を提供していくという。