ビジネス変革には、新しいタイプの人材が不可欠だ。住友生命では、ビジネス変革やDXに必要な3つの能力要素を「データリテラシ」「デジタルリテラシ」「ビジネスリテラシ」と定義、デジタルビジネスにおける成功の類型を探りながら、新たな保険サービスを創出してきた。健康増進型保険「Vitality」の開発責任者であり、デジタルオフィサーとして同社のデジタル戦略立案と人材教育に携わる岸和良氏に、DXの要となる人材育成の要諦を聞いた。

※本コンテンツは、2022年1月27日に開催されたJBpress主催「第2回 金融DXフォーラム」Day2の特別講演Ⅰ「ビジネス力重視のデジタルビジネス企画・推進人材育成 ~具体的な取組みの3年目~」の内容を採録したものです。

DX 推進の上で最も重要な能力は「ビジネスリテラシ」

 1907年の創業以来、115年の歴史を誇る住友生命保険相互会社(以下、住友生命)。日本を代表する老舗企業の一つとして、同社では昨今の世界的なビジネス変革の波をどのように捉えているのだろうか。デジタルオフィサーの岸和良氏は、「潮目が変わったのは、2000年ごろのことでした」と振り返る。

「インターネットに価格比較サイトが登場し、お客さまが自身で情報を入手して商品を選択するようになるなど、消費の形が大きく変わってきました。変化はその後も加速し続け、現在のマーケットの主導権はお客さまの側にあります。当然ながら、お客さまのニーズが見えない企業はこの先、生き残れません」

 この変化に呼応して新たなデジタルビジネスが台頭し、DXを武器とする事業者に従来のビジネスが奪われる「ディスラプト(破壊)」が、さまざまな領域で起こっている。こうした中で、各企業は自社のビジネスをさらに強化して競争に打ち勝つしか道はない。これが、世界的なビジネス変革が巻き起こっている背景だと岸氏は語る。

 さらに岸氏は、ビジネス変革には「データ」「デジタル」「ビジネスの仕掛け」の3つを使ってDXを推進していく流れがあると見ている。中でもビジネスの仕掛けをつくる上で必要な能力である「ビジネスリテラシ」は最も重要であり、この能力を発揮できているDXの成功事例に学ぶべきだと語る。

「私は社外で『DX検定』や『DXビジネス検定』に、委員として問題作成などに携わってきました。そこで多くのDXの成功事例を検証する取り組みを通じて、『ビジネスリテラシ』による成功事例には4つの類型があると考えるようになりました」

 1つ目は、デジタルで集客して人と人、売り手と買い手をマッチングするといったビジネスモデル。2つ目は、デジタル商材を売って利益を上げているもの。3つ目はリアルビジネスの上にデジタルで付加価値を与えるもの。そして4つ目は、リアルのビジネスモデルが強く、収益力を持っているものです。この最後のモデルでは、デジタルはビジネスモデルを補足、強化するものとして機能しています」

 こうした成功事例に学びつつ、「データリテラシ」「デジタルリテラシ」も加えながら、それらを自社にどう適用させるかを考えていくスタンスが重要だと岸氏は示唆する。