企業として、社会との境界線をもっと低く、もっと薄くしていきたい

――デロイト トーマツ グループの理念やAspirational Goalを実現するために取り組んでいる変革を教えていただけますか。

大久保 CTOの範囲には人材育成や採用、モビリティとともにカルチャーチェンジという領域が含まれ、その中では「人の経験」を変えていく取り組みも行われています。というのも、文化は日常的な人の経験の積み上げで築かれ、経験を変えないとカルチャーは変わらないからです。経験というのは、“見る”“聞く”ということも含みます。

 例えば、われわれは目指す未来を達成するのに不可欠な多様性の確保を戦略と位置付けており、この領域で行われている施策の一つには、パネルプロミスと呼ばれる登壇者の多様性をルール化したものがあります。これは、全社会議など多くの人の目に触れる会議やセミナーにおいて登壇メンバーのジェンダーバランスを確保するもので、比率を、男女各40%、残りの20%を多様性調整枠と定めています。内部の会議だけに留まらず、外部主催のイベントにおいても協力を要請しています。

 また、前述のShared Valuesを体現している人のレコグニション制度も変革の一つとして挙げられます。自薦・他薦問わず、Shared Valuesを表わす行動のエピソードを社内で募り、年に1回表彰するというもので、社職員のモチベーション向上、ひいては新たな企業文化の醸成に役立っていると思います。

――そうした変革などを経て、理念やAspirational Goalを実現できた際、デロイト トーマツ グループはどのような姿になっていると想像しますか。

大久保 一企業として、デロイト トーマツ グループと社会とのバウンダリー(境界線)をなくしていきたいですね。教育機関や企業、社会の間には、なんとなくの順番があるじゃないですか。学校で学んで、あるいはスクールで資格を取得してから就活を経て会社に就職する、というような。その順番もシーケンシャルである必要はないし、働きながら学んだり資格を取るという形がもっと当たり前になってもいいですよね。

 私は、デロイト トーマツで働いている、もしくは働いていた人たちの間にもっと活発な交流があっていいと思っています。分かりやすい例としては、例えば定年を“その年齢に達すると、この会社の人ではなくなる年齢”ではなく、“その年齢に達したら、デロイト トーマツ グループと自分のその後の関係性を改めて見直す年齢 ”といった、会社と話し合うタイミングのような形に変えるとか。

 Shared Valuesの価値観を共有しながら、社会との壁も低くなり、さまざまなところにデロイト トーマツが溶け込んでいるような状態になったらいいなと思います。