決算記者会見で発言するSBIホールディングスの北尾吉孝会長兼社長写真提供:共同通信社
リテールメディアなど、消費者に最適化された購買環境をもたらす「コネクテッドコマース」の概念が近年注目されている。米金融大手JPモルガン・チェースが、このビジネスの2025年の取引量を300億ドルと予測するなど急成長が見込まれているが、金融とメディアの融合がここにきて大きく進み始めたのはなぜなのか。
SBIホールディングス会長兼社長の北尾吉孝氏が金融業界の未来を予測する『金融とメディア、ITが融合する日』(北尾吉孝著/SBクリエイティブ)から一部を抜粋・再編集。米国の最新事例をもとに、テクノロジーの発展が加速させる金融・メディアの融合の成長性について解説する。
クライアントの選別で顧客を守る
『金融とメディア、ITが融合する日』(SBクリエイティブ)
リテールメディア・ネットワークが急拡大した背景には、SNSから広告クライアントの撤退が相次いだこともあります。
旧ツイッターからXに変わったとき、イーロン・マスク氏は投稿内容の規制が行き過ぎているとして、内容についての規制を緩和しました。すると、クライアントにとっては好ましくない投稿も目に付くようになり、企業イメージを何よりも大切にする大手企業の出稿停止が続いたのです。
ユーチューブでも、似たような状況が発生します。ほとんど詐欺ともいえる動画広告が一向に減らず、そうした広告と同列視されたくないクライアントは撤退していきます。
それまで、テレビや新聞などのオールドメディア中心だった広告業界の“ディスラプター(破壊者)”的存在だったSNSが勢いを失い、曲がり角に差しかかっていたときに、リテールメディア・ネットワークが広がりました。
プラットフォームを提供する側も企業であるだけに、自らの企業イメージを損なうようなクライアントは排除する必要があります。それは、自分たちの顧客に対する責務といえます。
チェースは、チェース・メディア・ソリューションズについて、「広告主企業は、顧客に対して、これまでの消費習慣を基にして明確な興味を持つ商品やサービスを提供できるため、顧客と広告主企業のブランドの双方にとってウィン・ウィンの関係を築ける」と語っています。






