積水ハウスでは、「『わが家』を世界一幸せな場所にする」という2050年に向けたグローバルビジョンと連動して、「積水ハウスを世界一幸せな会社にする」ことを目指した人事戦略が走り始めている。経営戦略と人財マネジメント をいかに結び付け、人事の立場から経営戦略の推進をサポートするか。同社のチャレンジは、「戦略人事」の1つの道しるべとなるだろう。人財開発部長の藤間美樹氏が、その背景を含めて詳細に語った。
※本コンテンツは、2022年2月28日(月)に開催されたJBpress/JDIR主催「第1回戦略人事フォーラム」の特別講演3「積水ハウス流、戦略人事 ―戦略を実行できる組織―」の内容を採録したものです。
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経営戦略と人事戦略のベクトルを合わせ、連動させる組織風土の改革を
「戦略人事」の解釈はさまざまだが、積水ハウス株式会社執行役員人財開発部長の藤間美樹氏は、これを「戦略を実行できる組織をつくること」と説明し、同時に「先人が築いてきた会社を維持する歓び」という言葉を挙げる。
「いかに経営者が心血を注いで経営に取り組んでいるか、熱い思いでやっているかが表れている言葉です。人事が経営のパートナーになるためには、この思いを理解することから始めるべきだと、自らを戒める言葉でもあります」
一橋大学の伊藤邦雄教授を座長とした経済産業省の「持続的な企業価値の向上と人的資本に関する研究会」の報告書は「人材版伊藤レポート」と呼ばれているが、それによると、持続的な企業価値の向上を実現するためには、経営戦略と人材戦略の連動が不可欠だとされている。さらに同レポートでは、人材や人材戦略が経営戦略自体の可能性を広げるとした、大きな期待も述べられている。
どのように経営戦略と人材戦略もしくは人事戦略のベクトルを合わせ、連動させていくのか。藤間氏は、「組織風土の改革」が鍵であると考えている。例えると、戦略は種、組織風土は土壌、業績は育つ樹木だ。素晴らしい種があっても、土壌との相性が良くなければ立派な樹木は育たない。また業績に影響を与えるさまざまな要因の中で、組織風土は30〜40%を占めるとされるが、さらにリーダーの存在が及ぼす影響は70%に上るといわれており、経営戦略を推進するリーダーの育成も不可欠だ。
経営戦略を達成するために、事業の機能や従業員の能力をどう高め、それにはどう行動する必要があるのか。具体的なポイントのひとつとして「事業部と対話しながら推進すること」が挙げられる。そこで重要な役割を担うのがHRBP(HRビジネスパートナー)だ。この存在が組織に入って人事制度を浸透させ、その成果や課題を人事の専門家集団であるCoE(センター・オブ・エクスパタイズ)にフィードバックする。
「F1に例えると、HRBPがドライバー、CoEが技術陣です。CoEがレーシングカーという人事施策や人事制度をつくり、HRBPが運用し経営戦略の達成に貢献します。人事部長は、F1チームの監督のように人事部をマネジメントします」
また人と組織が鍵となるため、タレントマネジメント体系の整備も欠かせない。採用から配置、育成、評価というサイクルをしっかりと把握し、回していくことが重要だ。