男性の育休取得率は平均3日で、取得率95.7%

 損保ジャパンでは「育児短時間勤務」は原則、子供が小学校3年生の学年末に達するまで利用可能で、複数の勤務時間パターンがあり、2019年度は1446人が時短勤務を利用している。

 復帰後、時短勤務で働く人もいるが、もちろん、フルタイムで働くことも選択できる。社内では時短で働くことが当たり前になり過ぎていて「フルタイムで働いてもいいでしょうか」と言った問い合わせがくることもあるそうだ。

 最後に男性だが、育休の取得日数は平均3日程度だ。それも以前はほとんど取得されていなかったため、2015年から本人と上司に対して人事部から育休取得推進のメールを送っている。すると2014年に3.5%だった取得率が2020年には95.7%となった。
 人事部人材開発グループの吉池玲子課長代理は「ただ100%という数値を目指すのではなく、本当の意味での家庭参画になるような制度にしたい。育休を取得したい人が、周囲に気兼ねすることなく取得でき、好きなようにとれる風土になるよう中身にアプローチしていきたい」と語る。

人事部人材開発グループの吉池玲子課長代理

 実際に育休を取得した社員から「取ってよかった。視野が広がった」といった意見もあり、今後はロールモデルチャンネルの動画配信を活用し、男性社員がどんな育児をしているかなど紹介していくことも予定している。

 「キーワードは『自分ごと化』ということかと思います。自分もダイバーシティの一員で自分がインクルージョンされた組織づくりに向けてできることを一つでも始めるというメッセージを伝える『アンコンシャスバイアス研修』を今年5月に開催しイントラネットでも配信しました。保険にご加入いただいているお客さま、事故に遭われた方など、当社を取り巻く環境下には多種多様な方がいらっしゃいますので、社内に多様性がないとしっかりとした向き合いができないと思っています」(吉池課長代理)

 VUCAの時代といわれるように、先の予測が難しい今とこれから。保険という分野で仕事をするにせよ、そうでないにせよ、イノベーションを起こすには多様性が欠かせない。そうした中で、多様性のある組織をつくるのに大切なことが、全従業員が当事者意識をもって「自分ごと化」していくことであると、この事例は教えてくれる。