未来都市プロジェクトの事業費が1.5兆ドルに
石油に依存する経済構造からの脱却を目指すムハンマド氏肝いりの案件が暗礁に乗り上げているからだ*1。紅海沿岸の砂漠地帯に建設を目指す未来都市「NEOM」プロジェクトの事業費用は5000億ドルから1兆5000億ドル以上に膨らみ、深刻な資金不足に苦しんでいる。
*1:サウジが目指す未来都市「NEOM」、皇太子肝いりの計画を縮小(4月6日付、ブルームバーグ)
このため、プロジェクトの目玉であるスマートシティー「ザ・ライン」の人口規模を150万人から30万人に縮小するとしているが、それでも資金不足が解消しない。
事業資金の手当てを任されている政府系ファンドは今年の予算を策定することができず、サウジ王家の間で懸念の声が広がっているという。
資金不足に悩まされるムハンマド皇太子に残された選択肢は原油の増産しかない。原油価格が下落するリスクを冒してでも、サウジアラビアは増産に舵を切る可能性が生じているのだ。
サウジアラビアとともにOPECプラスを主導するロシアの状況は安定してきている。
ウクライナ軍による石油施設へのドローン攻撃が続いているが、ロシア側も防御態勢を強化している*2。
*2:Russian Refineries Install Nets as Protection From Drone Attacks(4月19日付、OILPRICE)
3月のロシアから中国への原油輸出量は日量255万バレルに上り、過去最高を記録した昨年6月の同256万バレルに迫る勢いだ。
イスラエルと緊張関係にあるイランの第1四半期の原油輸出量は日量156万バレルと6年ぶりの高水準だ。
米国の原油生産量も日量1300万バレル超のレベルを維持している。
供給面の好調さに加え、米国の金利高がもたらす需要面への悪影響も懸念されており、「原油価格は今後下落傾向にある」との見方が出ている。
だが、中東地域の地政学リスクは残ったままだ。