日米台比による統合島嶼防衛構想を推進せよ

 中国は、尖閣諸島や台湾のみならず、南シナ海でも南シナ海仲裁裁判の裁定を無視し、南沙諸島にある周辺国と係争中の7つの岩礁の埋立て・人工島化・軍事基地化をすでに完成させ、さらに近接するフィリピンのセカンド・トーマス礁にまで魔の手を伸ばし始めている。

 このように、中国の脅威に直面しているのが、日本、台湾、フィリピンからボルネオ島へと繋がる「第1列島線」国であり、これらの防衛を連結し、そこに米国がコミットする「統合島嶼防衛構想」こそが、中国の覇権的拡大の野望を抑止・対処する上で、最も重要な取組みであるといえよう。

 それを基盤として、クアッド(Quad)やオーカス(AUKUS)の多国間ネットワークに加え、韓国やベトナム、さらにフランス、カナダなどを糾合した広域かつ多角的な「統合抑止(Integrated Deterrence)」体制を構築し、将来的には、インド太平洋版NATO(北大西洋条約機構)への拡大を視野に同盟戦略の一層の充実を目指すべきであろう。

 また、ウクライナ戦争が示すように、アジアと欧州の安全保障は連動しており、この際、NATO/EUとの協力連携を強化することも重要である。

 岸田文雄首相は日本時間の4月12日、ワシントンで米国のジョー・バイデン大統領、フィリピンのマルコス大統領との3か国による初めての首脳会談に臨んだ。

 会談では、中国による南シナ海での攻撃的な行動や、東シナ海での一方的な現状変更の試みへの深刻な懸念を共有した上で、3か国の海上保安機関による合同訓練に加え、海域のパトロールを行うなど、海洋安全保障協力を強化していくことで一致した。

 この際、自衛隊と各国海軍の合同演習や、日米両国によるフィリピン軍の近代化支援といった防衛協力を推進していくことも確認した。

 また、バッテリーの材料に欠かせないニッケルなどの重要鉱物や半導体の供給網(サプライチエーン)の構築など、経済安全保障分野での協力を強化することも申し合わせた。

 さらに、フィリピンのルソン島周辺の航路など、インフラの連結性を高める回廊プロジェクトを立ち上げ、港湾施設といったインフラ整備を推進していくことでも合意し、日米比3か国での戦略的トライアングルの形成に向け連携を強化することを確認した。

 同時に、このような取組みを通じて、日米台3か国の安全保障・防衛面の連携メカニズムを構築することも喫緊かつ不可欠の課題であり、日米台比4か国を連結した「統合島嶼防衛構想」を強力に推進することが、中国の野望を絶つ最強かつ最優先の選択肢となろう。