日米安保体制崩壊の危機も

 経済的影響は、前編で解説した「米台対処・国際社会支援シナリオ」と同程度と見積もられるが、日本施政権下にあるものの無人島である尖閣はまだしも、民間人が居住している先島諸島が攻撃されても米国が動かなければ、日米安保体制は崩壊の危機に陥る。日米安保条約の破棄、日本から米軍が撤退することも視野に入る。日本に抵抗の意思が弱ければ、日台は中国の影響下に入る。

 米国と国際社会が静観する想定のため、事態の拡大リスクは大きくない。ただし、先島諸島など日本の領土が明確に攻撃されており、米国が介入するエスカレーションを招き、次の「米中本格対決シナリオ」に発展する可能性もあるはずだ。

シナリオ(4)米中本格対決

 このシナリオが想定される最悪のものとなる。米国、日本、国際社会が台湾を支援し、中国による侵攻に対峙する。

 中国は、台湾のみならず西太平洋から米軍の影響力を排除することを試みる。台湾離島、尖閣諸島、先島諸島に攻撃がなされた場合、米国の関与は限定的となる可能性もあるが、米軍基地に被害が及べば本格的な米中対決が現実味を帯びる。米国が中途半端な対応をした場合、中国の軍事行動が拡大する可能性もある。

「米中本格対決」シナリオ
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 米中直接対決のリスクが極限まで高まると、朝鮮半島有事も誘発しかねない。中国との戦いに在韓米軍が加われば、韓国の守りが手薄になる。それを好機と見た北朝鮮が南進する可能性があるからだ。その場合は中台に加え、韓国との貿易遮断も生じるだろう。原油価格が過去の経済ショックのレベルをはるかに上回る水準まで上昇する可能性がある。

 中国と西側諸国との国交断絶も意識すべき局面であり、中国近海への海運アクセスが不能となると、深刻なエネルギー不足に陥る。