イスラエルのテルアビブで4月6日に実施された反政府デモ(写真:ロイター/アフロ)
  • イスラム組織・ハマスがイスラエルを奇襲してから半年が過ぎた。襲撃によりイスラエル側で1200人が殺害され、今も人質130人が行方不明とされている。
  • 一方、イスラエルによる報復攻撃でガザ地区では3万3000人以上が死亡し、いまだに7000人が瓦礫の下にいるとされている。
  • 子供や高齢者、非政府組織(NGO)のスタッフらも意図的に標的にされているとの見方もある。イスラエルを支援してきた米国も政策の変更を示唆し、いよいよイスラエルの孤立は際立っている。(JBpress)

(楠 佳那子:フリー・テレビディレクター)

 4月6日、イスラム組織・ハマスによる越境襲撃から半年を前に、イスラエルの主要都市テルアビブなどで、政府に対する大規模な抗議活動が行われた。テルアビブでは主催者発表で10万人以上が参加したとされ、他にも同様のデモが全国のおよそ50ヶ所で展開されたという。

 ハマスは昨秋の襲撃で約1200人を殺害し、犠牲者のほとんどが民間人だ。その上250人以上もの人質をとり、現在も130人が行方不明とされている。イスラエル市民の怒りの矛先は、半年の時を経てもなお、全ての人質解放を実現できていないネタニヤフ首相に向いている。人々は口々に「今こそ選挙を!」とスローガンを発し、同氏の退陣を求めた。

 中東の衛星放送局アルジャジーラは6日、現地からの報告で、今回の抗議活動ではこれまでも人質解放を訴えてきた組織と、反政府を目的とする活動が一つに合流したと報じている。人質解放に至らない一方で、ガザでの戦闘を長引かせてきた政権に業を煮やした人々が、早期の総選挙を訴えている形だ*1

*1Thousands of Israelis protest against government, urging captive deal(ALJAZEERA)

 イスラエル国防軍(IDF)は同日、人質となっていた47歳の男性の遺体発見を発表した。デモの参加者らはこの男性の名を呼びながら「エラド、ごめんなさい」とも連呼した。

 男性は人質となった後も動画で生存が確認されており、今年1月には生存していたと見られている。親族の女性はフェイスブックの投稿で「あなたを救えなくてごめんなさい」と悲しみを表した。また、解放に向けた合意が間に合えば救出されていた可能性があったと、現政権に対する怒りも露わにしている。

「私たちの指導者は卑怯で、政治的な思惑で動いたために(人質解放が)実現しなかった」「首相、戦時内閣、そして連立政権の人たち。自分の姿を鏡に映し、あなた方がこの血を流したのではないと言ってみよ」と憤った。

 今月3日には、戦時内閣に参加し支持が高まりつつあるガンツ前国防相が、今年9月にも前倒しの早期総選挙実施をと発言している。ハマスとの戦闘は、支持率低迷に喘ぐネタニヤフ氏の、いわば「政治ゲーム」と取られても仕方ないだろう。そして、その政治ゲームの犠牲になっているのは、無論、先に述べたイスラエル側の人質を含む民間人だけではない。