昨年10月18日、イスラエルを訪問し、テルアビブでネタニヤフ首相と会談したバイデン大統領(WHite House/ZUMA Press Wire/共同通信イメージズ)

(舛添 要一:国際政治学者)

 3月25日、国連安全保障理事会は、ラマダン期間中のガザ地区での即時停戦を求める決議案を採択した。ラマダンとは、イスラム教徒が義務として1カ月間断食する月のことを言う。今年は3月10日から4月9日までである。

アメリカが拒否権を行使せず

 これまでアメリカは、拒否権を行使して停戦決議案を4回葬り去っている。それは、ハマスの奇襲攻撃に対するイスラエルの自衛権の発動を認めるという観点からであった。アメリカのイスラエル寄りの姿勢を鮮明にしてきたのである。

 ところが、今回は、日本など非常任理事国10カ国が共同提案した停戦決議案に対して、アメリカは拒否権を発動せず、ハマス非難が含まれていないとして投票を棄権した。そのため、残る14カ国の賛成で決議案が採択されたのである。

 決議案には、ラマダン後も戦闘停止の継続、人質の即時かつ無条件解放、人道支援も含まれている。ラファには150万人を超える避難民が集まっており、イスラエルがこの地域への地上戦を実行すれば、民間人にさらに多数の犠牲者が出ることが危惧される。

 決議案採択に対して、イスラエルは反発しており、アメリカの方針転換を批判している。ネタニヤフ首相は「ラファに入ることなくハマスを打倒するのは不可能で、アメリカの支持がなくても我々は単独で計画を実行する」と述べた。そして、今回の決議案は「人質を解放せずに停戦が可能だという」希望をハマスに与えるものだと主張している。

安保理会合で話すイスラエルのエルダン国連大使=3月25日、ニューヨークの国連本部(写真:共同通信社)