彼女はオランダ人実業家と結婚して子供二人を産み、オランダに住んでいたが、2014年のウクライナ東部上空でのマレーシア機撃墜事件で多数のオランダ人乗客が死亡し、反露感情が高まったため帰国。その後離婚し、医療ビジネスに乗り出したとされる。

 このインタビューに対し、ドイツのメディアは、ロシア・ウクライナ戦争に一切触れず、人命重視を強調したことを「厚顔無恥」などと糾弾した。ロシアの一部独立系メディアは、ボロンツォワ氏のメディア登場は、将来、保健相など要職に就任する前触れの可能性があると伝えた。

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 政治に関心が強いのは、長女よりも次女のエカテリーナ・チーホノワ氏(37)で、国立モスクワ大学のAI(人工知能)研究所長だ。若手研究者養成プロジェクトの理事長や、産業企業家同盟で対露制裁を回避する委員会のメンバーも務める。将来、与党・統一ロシアを基盤に下院議員を目指すとの見方もある。

 オリガルヒの息子と結婚したが離婚し、その後バレエダンサーのイーゴリ・ゼレンスキー氏と再婚した。夫はウクライナ大統領と同姓で、登場しにくいだろう。

愛人の父がドンバスの貿易利権を確保

 大統領の愛人とされる元新体操選手で五輪の金メダリスト、アリーナ・カバエワ氏(40)の一族の動向もしばしば報じられるようになった。

 独立系メディア「重要な歴史」(1月9日)は、カバエワ氏の父、マラト・カバエフ氏がウクライナ東部ドンバス地方で資源と食糧を取引する権限を得たと報じた。

 元サッカー選手で、タタール系イスラム教徒のカバエフ氏は2016年、「イスラム・ビジネス国際会議」という組織を設立。傘下の企業が昨年、ロシアが併合したドンバス地方の小麦や石炭、鉱石をトルコやアルバニアに輸出したという。カバエフ氏は、「ドンバス地方の経済発展に貢献したい」としており、ビジネス利権を得た可能性がある。

 投獄中の反政府活動家、アレクセイ・ナワリヌイ氏のチームは、①アリーナ氏の祖母はモスクワ郊外の豪邸を大統領に近いオリガルヒから譲り受けた、②妹は不動産会社を立ち上げ、モスクワに高級アパートを所有する――などとし、一族に利権が与えられ、特権階級になったとSNSで発信していた。

 カバエワ氏は大統領との間に、少なくとも3人の子供をもうけたとされる。選手引退後は与党下院議員を経て、メディア複合企業の会長に就任。子供とともにスイスの高級住宅に居住していたが、ウクライナ侵攻後、スイス紙が「ロシアのエバ・ブラウン」と非難し、追放運動が起きたため帰国。現在はソチやバルダイの大統領公邸に居住しているとされる。エバ・ブラウンは、ドイツのアドルフ・ヒトラーの愛人。

 スイスでは昨年2月、カバエワ氏の出産を手助けしたロシア出身の女性産婦人科医がスイス国内で死去したと報じられた。この医師はがんを患っていたが、スイスのメディアに「大統領の私生児」に関するプライバシーを暴露したため、ロシア情報機関によって抹殺されたとの憶測も出た。

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