ウクライナのゼレンスキー大統領(写真:AP/アフロ)

(舛添 要一:国際政治学者)

 7月11日からリトアニアの首都ビリニュスで開かれていたNATO首脳会議には、G7議長国として岸田首相も参加したが、12日に閉幕した。その討議の結果は、加盟国の思惑の違いもあって、ウクライナの思い通りにはならない玉虫色のものとなった。

ウクライナ加盟の時期は明示せず

 11日の会議で発表されたNATOの共同声明は、ウクライナの加盟を確約した「2008年のブカレストでの首脳会議における約束を再確認する」とし、加盟手続きを短縮することを確認した。

 2008年4月にはブカレストでNATO首脳会議が開かれ、クロアチアとアルバニアの加盟招請が正式に決まったが、ウクライナとグルジア(現ジョージア)については、加盟国間で意見が割れた。その結果、両国は実質的な加盟候補国となるMAP(メンバーシップ行動計画)への参加は見送られた。

 ただ、両国は「将来加盟国となる(will become member)」という文言が共同声明に盛り込まれたのである。今回のビリニュスの共同声明で言及された「ブカレストでの首脳会議における約束」とは、その文言を指している。

 しかし、ウクライナが期待したような加盟の時期については具体的な言及はなく、「加盟国が同意し、条件が整えば、ウクライナを招請する」とするにとどめた。もちろんゼレンスキー大統領は不満を表明したが、先述したMAPを要件から外すことも決めており、その分、加盟手続きが迅速化する。