7月20日、露ガス大手「ノバテク」のレオニード・ミケルソンCEO(左)とともに、北部ムルマンスク州にある同社の北極圏の液化天然ガス(LNG)開発事業を行う施設を視察したプーチン大統領(写真:ロイター/アフロ)

(舛添 要一:国際政治学者)

 ウクライナ戦争、前線での戦闘は膠着気味であるが、交戦国双方が、様々な政治的、外交的な手段を行使して、戦況を有利に展開させようとしている。その意味で、戦争は拡大しており、停戦への手がかりはない。

穀物を武器に

 7月17日、ロシアは、国連とトルコに対して、黒海経由のウクライナ産穀物輸出合意の履行停止を通知した。この合意は、トルコと国連の仲介で昨年7月に決められたもので、120日ごとに更新し、これまで3回延期してきた。ウクライナのオデーサ、チョルノモルスク、ユージニ・ピウデンニの港から穀物が出荷されてきたのである。

 ロシアは、合意履行を停止した理由として、ロシア産の食料や肥料も輸出規制を撤廃するという取り決めが守られていないことを挙げ、責任は西側諸国にあると主張した。そして、合意への復帰条件として、金融制裁(国際決済ネットワークSWIFTからの締め出し)、農業機械部品禁輸、ロシア船の入港禁止などの解除を挙げた。

 しかし、西側が、この制裁解除を受け入れるはずはない。ロシアは、ウクライナへ向かう民間船は軍事物資を運搬していると見なして、攻撃の対象とすると警告している。

 また、アメリカ政府は、ロシアがウクライナの港への航路に追加の機雷を設置したという情報を流している。