株主優待制度は個人投資家の銘柄選択にも影響を与える。写真はイメージ(写真:アフロ)

株主優待の権利確定日が集中する3月は、1年で最も優待投資が盛り上がるシーズンだ。しかし、以前のように優待品欲しさにやみくもに権利取りをするような投資家は減っている。背景には、優待を実施する企業サイドの方針変換がある。優待人気の常連企業が制度廃止を発表する一方、これまでにない種類の優待制度を設ける動きも出てきている。

(森田 聡子:フリーライター・編集者)

株主優待の実施企業は2020年から減少

 埼玉県在住の50代パート女性は、間もなく優待投資歴15年になる。パート収入を使って、食料品や金券、化粧品など欲しい優待を実施する銘柄をコツコツ購入してきた。

 基本はバイ・アンド・ホールドで、優待廃止以外の理由で手持ちの株を売ったことはない。保有する日本マクドナルドホールディングスで、2014年に期限切れの鶏肉を使用した問題が発覚し株価が低迷したときも、手放そうとはつゆほども思わなかった。ハンバーガーやサイドメニュー、ドリンクと引き換えられる同社の優待券は女性の大のお気に入りだからだ。

 昨今の値上げラッシュで食用油や調味料、ビールなどの販売価格が高騰する中、「食費のかなりの部分を優待品で賄えているので家計も助かっている」という。

 企業が一定以上の株式を保有する株主に対して無償で製品やサービスなどを提供する株主優待は、明治時代に始まったとされる日本特有の制度。国内上場企業の約4割にあたる1500社弱が実施している。

 しかし、リーマン・ショック後の2011年から右肩上がりで増加していた実施企業が2020年から減少に転じている。この女性も、「一昨年あたりから投資仲間とのチャットでも優待廃止が話題に上るようになった。10年以上愛用している優待品が急になくなったら困る」と優待投資の先行きについて不安を漏らす。