2019年4月、コロラド州レイクウッドの高速道路で起きたトラックによる事故現場の様子。車20台以上が巻き込まれる玉突き事故で、4人が命を落とした。今年12月13日、事故を起こしたトラック運転手に禁錮110年の判決が下されたニュースは、あまりの量刑の重さに世界中で報じられた(写真:AP/アフロ)

(柳原 三佳・ノンフィクション作家)

 12月23日、こんなニュースが報じられた。

<ブレーキ利かず4人死なせた運転手に禁錮110年、減刑求める署名450万筆 米>(AFP)
https://www.afpbb.com/articles/-/3382253

『交通事故で、禁錮110年・・・』

 見出しを見たとき、思わず「何のこと?」と目を疑った。

 記事によれば、アメリカのコロラド州で起こった交通事故で、実際に禁錮110年という判決が下され、あまりの刑の重さに、減刑を求める大規模な署名運動が起こっているという。それだけではない、『トラック運転手の中には、この問題が解決されない限り、コロラド州での仕事を拒否するとソーシャルメディアに投稿する人もいる』というのだ。

コロラドのケースに比べれば嘘みたいに軽い日本の交通事故加害者の量刑

 筆者は日本国内で起こった交通事故を数多く取材しているのだが、この現象は、日本とは「真逆」だ。

 たとえば、12月21日に大津地裁で下された刑事裁判(危険運転致死罪)の判決は、懲役4年だった。

 この被告は、飲酒運転でセンターラインをオーバーして逆走し、対向車に衝突して9歳の男の子を死亡させている(以下の記事参照)。

<5月4日で終わってしまった日記 飲酒事故で愛息奪われた両親が法廷で訴えたこと>(柳原三佳: Yahoo!ニュース 個人)
https://news.yahoo.co.jp/byline/yanagiharamika/20211216-00272778

 検察の求刑は6年だったが、なぜか判決では2年減刑されている。

「飲酒運転は故意犯。その結果、死亡事故が起こっているのに、なぜこんなに刑が軽いのか・・・」

 判決結果に対しては、多くの疑問の声や批判が寄せられている。

 もちろん、国が違えば法律も違う。しかし、「交通事故」という事象において、ここまで差があるというのは驚きだ。

 コロラド州の交通事故では、なぜ「禁錮110年」などというとてつもない判決が下されるのか? その根拠や刑の内訳についてはどうなっているのか?

 そこで、かつてアメリカで大型トレーラーを運転し、大陸横断の仕事をしていたという、元プロドライバーのJun Jim Tsuzuki氏(63歳)に、この事故と裁判の内容について解説していただいた。