近所のスーパーやコンビニの棚から、インスタントラーメンが消えた。3月11日に発生した東日本大震災から3日が経ち、関東各地の計画停電が実施されると決まった直後のことだ。いつも並んでいるはずのモノがない。ガランとした棚を見ると、ちょっと不安な気持ちになった。

 だが、その近くでうどんやそば、そうめんなどの乾麺が普通に売られていた。お湯を注ぐだけのカップラーメンは別として、袋麺のゆで時間は他の乾麺と大差ない。麺つゆを使えば、スープが付いていなくても手間はたいして変わらない。なのに、なんでラーメンだけ・・・。かくも「インスタントラーメン=非常食」の刷り込みは強いのか、と驚いた。

 現在、日本におけるインスタントラーメンの年間生産数量は53億5000万食。全世界では、1年間に915億食が消費されている(2009年、日本即席食品工業協会調べ)。

日本のインスタントラーメン。もはや世界食に

 世界初のインスタントラーメンは1958(昭和33)年、日清食品の創業者である故・安藤百福が開発した「チキンラーメン」だとされている(異論もあるが、詳しくはのちほど)。

 71年には、同じく日清食品からカップラーメンの元祖「カップヌードル」が登場。この50年余りで、インスタントラーメンは国民食どころか、国際食としてすっかり定着している。

 世界で広く食されているインスタントラーメン。その歴史を辿っていくと、インスタント以前のラーメンの起源にまでタイムスリップしてしまう。

日本独自の「ラーメン」の誕生は明治時代

 インスタントラーメンが日本の発明品ならば、その大本であるラーメンも中国から伝わった麺料理を日本独自にアレンジした日本食である。

 ラーメンの語源は、手延べ麺を表す「拉麺(ラーミエン)」というのが有力な説だ。

 石毛直道著『麺の文化史』によると、麺は「手延べラーメン系列」以外に、道具や油を用いて細くひも状に延ばす「そうめん系列」、日本のそばやうどんなどの「切り麺系列」、ハルサメやビーフンなど小さな穴から押し出し、すぐに熱湯でゆでる「押し出し麺系列」、ベトナムのフォーなどコメ粉の膜から作る「河粉系列」の5つに分類できるという。