9月28日のアイルランド戦で活躍する具智元。左は姫野和樹(写真:森田直樹/アフロスポーツ)

 韓国・ソウル出身の25歳。父親の具東春(グ・ドンチュン)もラグビー選手で日本のホンダヒートでも活躍し「アジア最強プロップ」と呼ばれた名選手、元韓国代表だ。兄・具智充(グ・ジユン、現ホンダヒート)とともに小学校6年からニュージーランドのウェリントンへ留学し、その偉大な父の影響でラグビーを始めた。

 中学2年で来日し、大分県内の公立中学校に編入後、日本文理大付属高校のラグビー部で頭角を現した。全国大会には進めず「花園」には無縁だったが、高校日本代表の一員としてその名を轟かせ、拓殖大学に進学後も20歳以下日本代表メンバーに加わった。日本チームのサンウルブズにも選ばれ、スーパーラグビーに参戦。拓大卒業後にホンダヒート入りし、今から2年前の2017年11月に行われたトンガ戦で日本代表の初キャップを獲得している。

試合前にはチームメイトと「君が代」斉唱する具智元

 10年以上も日本で生活し、高校時代から日の丸のユニホームを身にまとっている韓国籍のプレーヤー。その具だけでなく日本代表には31人中15人の外国人選手がいる。

 他の競技や五輪とは違ってラグビーの各国代表は国籍だけにとらわれず「(a)当該国で出生している」「(b)両親、祖父母の1人が当該国で出生している」「(c)プレーする時点の直前の36カ月間継続して当該国を居住している。もしくは通算10年にわたり居住」のうち、いずれか1つの条件を満たせば資格を得られるからだ。

 ただ「他国での代表歴がないこと」を前提条件としていることから日本で代表メンバーに選ばれると、もちろん母国の代表へ入る資格を失う。帰化していないとはいえ、ラグビー日本代表に選ばれた外国籍の選手たちは大きな決意と覚悟を胸に刻み込んで日本チームのために戦っている。

 普段はラグビーにあまり興味がない人たちや、W杯で初めて試合を見たという一部の一般層からは外国人プレーヤーが日の丸を背負っていることに「違和感」や「おかしい」などと訴える声も時折耳にする。人それぞれの意見だから別に構わないだろうが、個人的には詭弁だと感じている。