今年9月27日、東京2020のテストイベント「READY STEADY TOKYO」テコンドー大会の会場で、選手と言葉を交わす日本テコンドー協会の金原昇会長(写真:森田直樹/アフロスポーツ)

 見ていても痛々しい。内紛が勃発した全日本テコンドー協会の問題だ。環境改善を求める選手側と、これを「コミュニケーション不足」の一言で事態の収束を図ろうとする金原昇会長をはじめとした協会幹部の対立が激化している。

 両者の対立は9月に行われていた強化合宿を参加メンバーの28人中26人もの選手たちがボイコットしたことで表面化した。1日に東京都内で協議会が行われたものの、協会幹部と選手側の主張は食い違うばかり。怒り心頭の選手が途中退席するなど、双方の関係悪化は修復不可能な状況に陥っている。

補助金はスタッフの旅費に充て、選手は自腹で世界選手権へ

 まず、この問題の経緯を整理しておきたい。

 現況の指導体制に強い不信感を抱く強化指定選手たちが今年6月、協会の理事会へ「意見書」を提出。ここで出された要望の内容は参加が義務付けられている強化合宿を任意参加に変更することに加え、公式大会前は所属チームでの調整を認めることなどだった。

 これに補足すると、選手側からは「これまで強化合宿は基礎トレーニングばかりが中心で一体何のための集中期間なのか分からない。毎月、岐阜・羽島市で行われる合宿にも参加を義務付けられている。それでも『所属しているところで自主的に練習させてほしい』と協会側に言うと『代表選手から外れてもいいのか』と脅され、仕方なく従わざるを得なかった」と〝恐怖政治〟に関する具体的な詳細も明かされている。

 さらに代表選手の1人が一部メディアに「今年5月に英国で行われた世界選手権では選手よりも多い数の強化スタッフが代表団に加わり、JOCからの補助金がスタッフなどの旅費に充てられた。選手側は今年も含め毎回、世界選手権ではいつも自腹で20万円近い負担を強いられる」という趣旨のコメントを口にし、波紋は広がる一方。国からの補助金が選手強化に役立っておらず、実は不正な形で別のところに流れていってしまっているのではないかとの疑惑も浮上している。