KBOのトップは元首相

 周囲の話を総合すると、どうやら韓国・文在寅政権が背後で暗躍しているようだ。KBOリーグとも昵懇の関係にあるMLB(米メジャーリーグ)の極東担当スカウトは「これは事実上、KBOリーグに対する韓国政府の圧力だろう」と述べ、こう続けた。

「KBOのトップである『総裁』のポジションには、かつて国務総理(首相)を務めた鄭雲燦(チョン・ウンチャン)氏がいる。今も政界に強いコネクションを持つ鄭氏は、時に文大統領に物言いをつけるなど現政権を全面支持しているわけではない。だが『反日』に関しては、おおむね同意している。

 その鄭氏のルートを通じ、文政権側からKBOに『強い要請』として『関係の悪化している日本で長期間、滞在することは政府としても好ましいと言えない』とする旨が伝えられたようだ。この話がKBO各球団の幹部クラスが集まる代表者会議の席上において、今秋に日本でキャンプを行う予定を組んでいた球団の幹部たちにも知れ渡ることになった。

 政府はキャンプ中止を厳命しているわけではないが『強い要請』としている以上、それを無視するわけにもいかない。日本流の言い方をすれば、そういう〝忖度〟もKBOの球団幹部の胸の内にはあったのだろう。KBO側としても、ここで政府からの『強い要請』を受け入れ、恩を売っておけば国内でKBOリーグをさらに発展させていく上で、さまざまな恩恵に授かれるという計算も働いた。反日政策を推し進める文政権からしてみればKBOが日本と関係を持つこと自体、看過できることではない。そういう意味で文大統領も今秋の日本行きを中止した複数球団の決定に喜んでいるはずだ」

李明博政権で首相を務めた鄭雲燦氏。現在はKBO総裁になっている(写真:ロイター/アフロ)

 本来ならばスポーツと政治は切り離されるべきだが、これが今の韓国の現状なのだろうか。NPB内でも「日韓関係の悪化は韓国人選手が日本の球団でプレーしなくなっている風潮に拍車をかけている。球団側がオファーをかけても日本行きに難色を示す韓国人選手は昨今少なくない」と嘆く声が出ている。

 かつて多くの有名韓国人選手がNPB球団でプレーするなどプロ野球を通じ、両国間に友好の懸け橋が出来つつあったのも今は昔。修復の糸口すら見えない日韓関係の悪化は、このように政治以外の分野にもますます波及している。