「自由」を得た革命から8年、困窮する若者 チュニジア

チュニジアのジャスミン革命から8年目を記念するイベントのリハーサルの様子。チュニジアの若者は、ジャスミン革命は市民の尊厳回復と国の経済難脱却にはつながらなかったと語っている。(2019年1月11日撮影、資料写真)。(c)FETHI BELAID / AFP〔AFPBB News

(高野 研一:コーン・フェリー日本共同代表)

 我々はデジタルデバイドによる社会不安を克服できるのか?

 寄附や研究開発の社会的位置づけを変えることで、二極化による社会の崩壊を回避することが可能ではないかと思う。

「デジタルデバイド」とは、デジタル革命に適応できる人と、そうでない人の間で二極化が進み、格差社会につながる現象のことをいう。デジタル革命によって、これから新興企業が爆発的な価値を生むようになっていくが、そこで生まれた富の多くは、創業者やそこに投資した資産家に帰属し、大衆には還元されない。それが社会不安につながっていくことが懸念されているのだ。

民衆の不安が暴走した「アラブの春」

 産業革命の時代には、巨大工場が建設され、大企業が台頭し、それが多くの人に雇用の機会をもたらした。しかし、デジタル革命の時代においては、事業価値の創出が必ずしも雇用の創出につながらない。2014年にフェイスブックがワッツアップを2兆円で買収して話題をさらったが、当時ワッツアップで働く社員数は、わずか50人だった。

 ウーバーのケースを見ても、自動車メーカーを上回るほどの企業価値が新たに生まれたにもかかわらず、その大半は創業者や資本家に帰属し、多くの運転手の生活が必ずしも豊かになっているわけではない。

 そうした中で先進国では高齢化が進み、国の財政赤字が拡大の一途をたどっている。国民1人当りの借金が800万円を超える日本は、その最たるものだろう。増え続ける医療費や年金の支払を賄うことができるのか、懸念を抱く人も多い。

 米国のトランプ大統領の誕生に見るように、こうした不安がポピュリズムにつながりつつある。不安を抱えた大衆層の声を代弁した政治家が、民主主義のルールの中で権力を握り台頭する。しかし、彼らにも問題を解決できるアイデアがあるわけではない。不安や不満に駆り立てられた民衆ほど危険なものはない。それが暴走したのが「アラブの春」だ。