外交政策の成功を国民に示すために、トランプ大統領が妥協する可能性が取りざたされているが、金正恩は核兵器を簡単に手放すような指導者ではない。それは、核兵器こそ自らの、そして北朝鮮の命綱だからである。国連安保理の専門家パネルは北朝鮮が「核・ミサイル開発をやめていない」という報告書をまとめている。

嘘と誇張が混じり込んだ情勢分析

 トランプ大統領のモンロー主義的傾向も気になるところである。演説で、「偉大な国は終わりなき戦争はしない」と述べて、アフガニスタンやシリアからの米軍撤退をほのめかしたが、拙速に米軍の縮小や撤退を行えば、またISなどのテロリストが復活する。しかし、トランプの念頭にあるのは、米軍兵士を帰還させて、国民の喝采を浴びることである。そして、米軍駐留経費を削減したとして、支持率を上げることである。

 2月6日、「ISISと戦う有志連合」の会議で、トランプ大統領はISを壊滅させたので、近くシリアから撤退すると述べたが、撤退すればISはすぐに復活する。米上院は5日、アフガニスタンとシリアのテロ組織が壊滅するまでは米軍撤退を急がないよう求める法案を可決している。トランプの情勢分析には嘘と誇張が入っている。

 中東政策については、イスラエルに肩入れし、イランを敵視する政策は、ヨーロッパや日本から見ると行き過ぎである。ブッシュ大統領は、2002年1月29日の一般教書演説で、北朝鮮、イラン、イラクを「悪の枢軸」と呼び、イラク戦争でサダム・フセイン体制を崩壊させた。しかし、それから16年経った今、イラク国民が幸福になったかと言えば、疑問符を付けざるをえない。

 トランプは、イランを中東における最大の敵として、核合意から撤退し、経済制裁を加えているが、この政策は中東の緊張を高めるばかりで、この地域の安定に寄与するとはかぎらない。イラン国民もまた、トランプ政権の政策で生活の悪化を強いられている。

 アフガニスタン、イラク、シリア、パレスチナ、イランと、アメリカの政策は、結果から見ると失敗であり、地域の安定にも民生の向上にも寄与していない。イスラム圏については、特異なキリスト教国であるアメリカには適切な政策が立案できなないのかもしれない。また、政権交代の度に、政策が大きく変化することも問題であろう。中東については、旧宗主国、英仏のほうが知識も知恵も優れている。