(黒井 文太郎:軍事ジャーナリスト)
ベネズエラ情勢が混沌としている。転機は、ニコラス・マドゥロ大統領が1月10日に2期目の大統領就任を宣言したことだ。
昨年(2018年)5月の大統領選は、政府が有力候補を拘束するなどしたため、主要な野党勢力がボイコットした中で強行された。選挙は著しく不当なもので、そのため、マドゥロの大統領就任を野党は認めず、国民の大多数も反発した。
そんな中、1月23日に大規模なデモが起き、同日、「大統領不在時には国民議会議長が大統領を代行する」という憲法の規定に則って、フアン・グアイド国民議会議長が暫定大統領就任を発表。アメリカはじめ西側主要国や、中南米の主要な国々もこれを承認した。
対するマドゥロ陣営は、当然ながらその動きに反発。キューバやニカラグア、ボリビアなどの中南米の反米左翼国家に加え、ロシア、中国、イラン、トルコなどもマドゥロ支持に立っている。
マドゥロ側はさかんに「アメリカが裏で糸を引いているクーデターだ」とのプロパガンダを発信している。だが、ベネズエラの混沌はそもそも、マドゥロ政権の経済的失政による年率100万パーセントに達するハイパーインフレなどによる極度の貧困化にあり、不満を高める国民を、マドゥロ政権が国家警察や民兵などを使って暴力的に弾圧してきたことが原因だ。
実際、2014年や2017年には大規模な街頭デモが武力で鎮圧されており、多数の死傷者を出している。国家警察はいまや、反政府派とみられる人々の拘束・拷問なども日常的に行っている。
現在、グアイド暫定大統領側とマドゥロ政権はともに自らの正統性を主張している。2月2日にはマドゥロ支持の中規模の集会が首都カラカスで組織されたが、それをはるかに凌駕する反マドゥロ街頭行動がベネズエラ全土で大規模に行われた。