中国・上海の路上で早朝太極拳をする高齢者たち

(福島 香織:ジャーナリスト)

 2月5日は中国の春節(旧正月)だった。この春節をはさんだ40日の間に起きる大移動は延べ30億人、うち旅行に出かける人は4億人、海外旅行に出る中国人は700万人。この時期の中国人1人あたりの移動距離は410キロ。中国人全員の総移動距離は土星にまで行けるほどらしい。

 日本に旅行したいという中国人は多く、中国の大手旅行サイト「携程(シートリップ)」のアンケートでも日本はタイに次ぐ2位の人気である。日本で春節を迎える中国人のために、東京タワーは春節を祝う喜紅に染まり、日本の安倍晋三首相も中国語を交えた春節挨拶のビデオメッセージを訪日中の中国旅行者向けに発表した。これは日本に限ったことではなく、世界各国、どこでもかしこでも中国人向け春節イベントが行われている。大晦日にあたる除夕(2月4日)には、中国版紅白歌合戦的な恒例テレビ番組「春節聯歓晩会」がネット上で同時配信される。世界中どこでも中国人は春節を過ごせるというわけだ。

 それだけ中国人が世界中にあふれているということで、中国人口がいかに多いか、そして、経済的に豊かになってくると(たとえ豊かになっていなくても)彼らはまず海外に出ようとする「拡張」的気質が根っこにあるのだな、というのを実感させられるのが、やはりこの時期である。

労働人口が初めて減少

 だが、「人口が多い」というイメージがずっと根付いている中国で、今年に入ってから人口減少が深刻な問題として強く認識され始めた。

 1月21日、国家統計局から2018年の人口動態統計が発表された。それによると、2018年末の総人口は13.95億人。2018年の出生人口は1523万人で2017年の1723万人より約200万人減少。2016年が1786万人だったので、2年連続減少ということになる。

 自然出生率は10.8%、死亡数は993万人で7.13%、530万人の人口増で人口増加率は3.81%。出生率と人口増加率は建国1949年以来最低だと中国メディアは報じている。