ちなみに、ウイスコンシン大学マジソン校の易富賢教授によると、中国政府が公表している出生率1.6人という数字自体がすでに間違っているという。易教授は、正確な計算をすると2010~2018年の平均出生率は1.18人であり、政府は一人っ子政策の弊害を隠蔽するためにデータを隠蔽している、と指摘している。

 いずれにしろ、2016年に出ている国務院報告では、人口マイナス成長期への転換は2030年と予測され、ピークは14.5億人ということだが、それよりはるかに前倒しになったということになる。2017年に出された国連の世界人口展望では9の違う推計値が紹介されており、中国の人口ピークは最も早い予測では2021年、最も遅い予測では2044年、その他7の推計値が2032年である。国家統計局の強がり発言とは裏腹に、党内での人口問題に対する危機感は相当深刻だと推察される。

対応を迫られる切実な「養老」問題

 人口減少に伴う労働力減少への対策については、当面は日本のように定年年齢を65歳にまで伸ばしたり(中国の定年は55~60歳)、高齢者の労働力活用や、AI活用によってカバーできるのだ、という声が聞かれる。だが、根本的な問題は、今後の高齢社会を支えられるほど経済が成熟していない、という点にある。

 中国の経済成長率が6.6%という数字が幻想であることはすでに内外に知れわたっており、実際はそれより5%以上差し引くのが妥当だとみられている。しかも、1人あたりGDPはまだ1万ドル(日本は3.8万ドル)。2020年にようやく小康社会(そこそこゆとりある社会)が実現するとみられていたが、その前に、労働量減速期、少子高齢化社会に入ってしまったので、切実な「養老」問題が突出してくることは疑いない。すでに、老人虐待、老人遺棄の事件が少なからず報じられ、高齢化社会の問題として対応が迫られている。

 例えば80歳になる病身の父親の介護を放棄し昨年5月に実家で孤独死させたとして、その息子および娘5人に対して四川省の平武県人民法院は昨年秋、1年6カ月から2年の懲役刑の判決を出した。子供全員が出稼ぎに出ており、父親に対してたまに見舞いにいくくらいであった。村民委員会が子供たちに連絡しても彼らはお互いに責任を擦り付けているだけで、態度は劣悪だったとして、厳しい判決が出された。