昭和のグラタン、オーブンがない家庭の作り方は?

「栄養と料理カード」でたどる昭和レシピ(8)グラタン

2018.11.23(Fri) 三保谷 智子
筆者プロフィール&コラム概要
グラタン。料理ではソースづくりが重要となる。

 1935(昭和10)年創刊の月刊誌『栄養と料理』(女子栄養大学出版部刊)の2号目から付録についたのが1枚の小さなカード「栄養と料理カード」。健康に留意したおいしい料理が誰でも作れるように、材料の分量や料理の手順、火加減、加熱時間、コツなど納得のいくまで試作を重ね、1枚のカードの表裏に表現。約10×13cmの使いやすい大きさ、集めて整理しやすい形にして発表した。
 この「栄養と料理カード」で紹介された料理を題材に、『栄養と料理』に約30年にわたり携わってきた元編集長が、時代の変遷をたどっていく。
 なお、『栄養と料理』は現在も刊行している(http://www.eiyo21.com)。

 オーブンから取り出したばかりの熱々のグラタン。とろけたチーズやバターがふつふつ。香ばしい香り、そして濃厚なソース。グラタンといえばこの「白ソース」が欠かせない。今は「ホワイトソース」、フランス語では「ソース・ベシャメル」といったところ。風味のよさとなめらかさが決め手である。本誌では、いつごろから紹介していたのだろうか。

 ふり返ると、牛乳は、戦前の日本人の日常の食生活では一般的な食材ではなかった。だが、白ソースは創刊初年の1935(昭和10)年8月号、「栄養と料理カード」の2号目に登場する。カードには「基本料理2號」と明記してあり、1号目「吸物だし」に続き、「白ソース」「味噌汁」「マヨネーズソース」「米飯」「赤飯」の6枚を紹介している。当時、すでに基本料理として西洋料理も入っていたことに驚いた。

「白ソース」は基本料理の1つ――昭和10年

 材料は5人分と1人分の併記。主材料はバター、メリケン粉(小麦粉)、牛乳で、分量は1:1:10の割合と覚えやすい。カード裏面の項目「調整」は、いわゆる「作り方」のこと。生化学実験の解説のよう。

 鍋にバターを溶かしてメリケン粉を入れ、木じゃくしでかき混ぜながら弱火で気長に炒め、粉の粘りがなくなりさくさくとしてきたら、牛乳少量を加えて団子のようになるまでかき混ぜ、牛乳を3~4回に分けて加え混ぜてなめらかなソースにし、調味する。

 改めて読んでみると、意外に簡単な表現と気づく。初めて作る人向けならば、器具の選び方も重要となる。今であれば、熱のあたりのやわらかい厚手の鍋を用い、木じゃくしは鍋底をまんべんなくかき混ぜやすいように先がまっすぐな道具(スパチュラ)を使い、牛乳は温めてから加えると粉がだまになりにくい、と留意点を書きたくなる。

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三保谷智子(みほやともこ)

栄養と料理』元編集長。2011年4月から香川昇三・綾記念展示室勤務。学芸員。

東京都出身。1977年立教大学文学部史学科卒業後、香川栄養専門学校栄養士科(現 香川調理製菓専門学校)へ進学、「栄養士」の資格を取得。その後、1979年女子栄養大学出版部雑誌編集課に入職、約30年『栄養と料理』の編集に携わる。1988年より2011年まで、10年間編集長を務める。途中、同部マーケティング課、書籍編集課に在席。

独立行政法人国立健康・栄養研究所外部評価委員。「食生活ジャーナリストの会」会員、NPO法人「野菜と文化のフォーラム」会員、NPO法人「くらしとバイオプラザ21」理事。現在、『栄養と料理』で連載「レシピの変遷シリーズ」を執筆中。


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