昭和のグラタン、オーブンがない家庭の作り方は?

「栄養と料理カード」でたどる昭和レシピ(8)グラタン

2018.11.23(Fri) 三保谷 智子
筆者プロフィール&コラム概要

ソースのかたさは焼き上がりで、ゆらゆら動く程度――昭和47年

1972(昭和47)年4月号。大きな容器(直火にもかけられる超耐熱性のパイロセラム)で4人分をいっぺんに焼く。同号別カードに料理の基本「ホワイトソース」がある。
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 バターと油を半々で合わせ、重量比でバター+油が1、小麦粉が1.1、牛乳+スープ(チキンスープのもと+水)が21の割合。裏面の「コツ」には、ソースのかたさは、器を運ぶときゆらゆらと動く程度がよいと解説するが、初心者には分かりにくい。

 筆者の経験では、白ソースはだまになりやすいだけでなく、煮つめ足りなかったり煮つめすぎたりと、仕上がりのかたさを見越して加熱しなければならないので、粉っぽかったりべたべたしてなめらかでなかったり、加減が難しい。この段階でつまずくと料理の仕上がりに大きく影響する。

 そんな心配を推し量ってか、同号別カードに料理の基本「ホワイトソース」がある。煮つめ具合を写真で紹介し、ソース、グラタン、コロッケの用途別に基本材料の分量を明記している。ソースは木じゃくしですくい上げてもさらさらと流れる程度、グラタンはいくらかぽったりと、コロッケはかき混ぜたときに鍋底が見えるくらいのかたさにする、と明解である。

 写真右上Aは、バターを溶かして小麦粉をさらさらに炒めているところ。同Bは煮つめ具合。木じゃくしですくい上げてソースの流れ具合を見る。

 手軽に作るには、バターと小麦粉をあらかじめ混ぜ合わせてブールマニエにし、温めた牛乳に混ぜ合わせる方法がある。ほかに、電子レンジで牛乳、バター、小麦粉を順に加熱して混ぜ合わせて作る方法もある。時間をかけて煮上げたソースとは風味は異なるが、副材料を加えればでき上がりの味をカバーすることができる。

 また、ホワイトソースは缶詰め、パウダー状、レトルトと各種あるので、気に入った具を用意して市販のソースで作れば早い。デパ地下やスーパー、コンビニで手軽に買って電子レンジで温めれば食べられる。

 わざわざホワイトソースから作らずに済ませる方法はある。だが、筆者にとってグラタンは手をかけて作るもの。昭和時代、わが家の台所がキッチンに変わり、家庭でもオーブン料理が作れるようになったときの思い出とともに、日本の台所の洋風化を象徴する料理の1つとして思い出される特別なものだ。

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三保谷智子(みほやともこ)

栄養と料理』元編集長。2011年4月から香川昇三・綾記念展示室勤務。学芸員。

東京都出身。1977年立教大学文学部史学科卒業後、香川栄養専門学校栄養士科(現 香川調理製菓専門学校)へ進学、「栄養士」の資格を取得。その後、1979年女子栄養大学出版部雑誌編集課に入職、約30年『栄養と料理』の編集に携わる。1988年より2011年まで、10年間編集長を務める。途中、同部マーケティング課、書籍編集課に在席。

独立行政法人国立健康・栄養研究所外部評価委員。「食生活ジャーナリストの会」会員、NPO法人「野菜と文化のフォーラム」会員、NPO法人「くらしとバイオプラザ21」理事。現在、『栄養と料理』で連載「レシピの変遷シリーズ」を執筆中。


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