吉祥寺は子供の頃、憧れの町だった。母親の買い物にお供して、名店会館という当時は吉祥寺唯一の大規模商業ビルによく行ったことを覚えている。週末も家で仕事をしていた父を気遣うことを口実に、まだ若かった母は子連れだとはいえ当時としては洒落た町へ買い物に行くのが楽しみだったのだろう。

悪友が作ってくれた吉祥寺デートマップ

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 いま吉祥寺に住んでいる人も名店会館のことは知らない人がほとんどだと思う。

 今から40年前の1971年に取り壊されて、現在はその跡地に東急百貨店が建っている。

 その名店会館である時、お店に来た客の身長や体重を測るサービスをしていた。初めて母親の身長を超えたことがたまらなくうれしかったのだろう、今でも鮮烈な記憶が残っている。

 大学に入ってからは、根っからの吉祥寺っ子である悪友が、おくての私のために吉祥寺デートマップというのを作ってくれた。

 ジャズ喫茶やはやりの洋食店など若い女性が喜びそうなポイントを手書きの地図の上に印をつけてくれたのだ。

 その地図には擦り切れるまで何度もお世話になった。しかし、自分の身の丈に合わなかったせいなのか、デートが交際に発展したという思い出は残念ながら残っていない。

 会社に入ってから、ソニーの創業者である井深大さんが亡くなったので追悼文を書くことになり、改めて井深さんの腹心の部下だった人にインタビューしたことがある。

 その方が会う場所として指定されたのが日曜日の吉祥寺だった。井の頭公園前のいせや総本店で、焼き鳥を焼く煙を浴びながらたっぷり3時間、井深さんの思い出話をうかがったことを思い出す。井深さんの女性に対する純真さは特に印象的だった。

 その方はいせや総本店が大好きで、週末にぶらりと1人で来てはよく焼き鳥を味わうとのことだった。おかげで私は家に帰ったあとも一日中、体から焼き鳥のにおいがした。

 その吉祥寺はいま、東京に住む人たちにとって最も住んでみたい町なのだそうだ。