1 はじめに

1853年、浦賀沖に来た黒船4隻の中の1隻「サスケハナー」(ウィキペディア

 「太平の眠りを覚ます上喜撰(蒸気船)たった四杯で夜も眠れず」。1853(嘉永6)年に黒船来航で大騒ぎの日本を揶揄した狂歌である。

 平成22(2010)年尖閣沖での青い中国漁船の体当たり攻撃や、平成19(2007)年の北朝鮮弾道ミサイル発射時なども大騒ぎになった。

 黒船では大騒ぎに引き続き、列国のアジア植民地化の危険を乗り越え明治維新という大きな歴史の進展があったが、今回はどうだろう。

 北西からの強風・大波に飲み込まれるのを防ぐ対応を急がねばならない。大騒ぎをするだけで忘れ去られれば、文字通り国難が忘れた頃にやってくる。

 我が国は、言うまでもなく島国で、四面をオホーツク海、日本海、東シナ海そして太平洋に囲まれている。日本へは海を渡ってこなければならない。すなわち脅威もまた海を越えてやってくる。

 この脅威に最初に対抗するのが海上自衛隊と航空自衛隊である。従って、海・空戦力の重要性は論ずるまでもない。そして中国の軍近代化特に海軍力の増強はまさに歴史的と言える。

 さらに、南西諸島、小笠原諸島、南鳥島や沖ノ鳥島を持つ日本の排他的経済水域は膨大な広さを有し、海自、空自に期待するところは大きい。

 しかし、海・空自さえしっかりしていれば日本は守れると勘違いをして、陸上自衛隊の予算を削ってでも海・空自衛隊を強化せよとなると、ナンセンスを超えて、これは危険である。