昨年のドミトリー・メドベージェフ大統領による北方領土訪問に続き、ロシア政府・軍高官の北方領土訪問が相次いでいる。さらに、これを「許し難い暴挙」と呼んだ菅直人首相の発言を巡って、北方領土を巡る日露関係は俄かに緊張局面に入ってきた。
「北方領土を守るために最新鋭設備を導入する」
こうした中で、今年2月10日、ロシアのメドベージェフ大統領は北方領土訪問を終えたばかりのアナトーリー・セルジュコフ国防相らと会談し、同地域の軍事力を増強する方針を示した。
北方領土は「ロシアの戦略的地域」であり、その防衛を全うするために最新装備を導入するという。
現在、北方領土に配備されている軍事力の主力は、第18機関銃砲兵師団と呼ばれる部隊である。
2008年頃まで、ロシア軍には23個の「師団」(各定員1万2000~2万4000)が存在していたが、このうち22個師団は軍改革の過程で解体され、より小規模な「旅団」(定員3500人程度)に改編された。
つまり、北方領土の第18機関銃砲兵師団は、ロシア軍に唯一残された師団ということになる。
旅団が敏速な機動性を特徴とするのに対して、北方領土だけは地域張り付け型の師団編成を維持することで、あくまで同地域を軍事的に固守する意図を示す狙いがあると思われる。
ロシア唯一の師団、その戦力やいかに
では、その戦力はどれほどのものなのだろうか。
ソ連末期の1991年の時点で、同師団には9500人程度の兵力が配備されていたとされる。その後、1995年までに兵力は3500人程度まで激減し、現在までほぼ横ばい状態が続いているようだ。
また、かつては約40機の「MiG-23」戦闘機が択捉島のブレヴェストニク(旧・天寧)飛行場に配備されていたが、これも1990年代中にすべて撤退し、現在常駐しているのは陸軍航空隊のヘリコプターや物資輸送用の小型輸送機程度と見られる。
質の面で言えば、同師団の装備は全ロシア軍中で最も旧式な部類に入る。