2月7日より11日まで、モスクワで恒例の「国際食品飲料展―Prodexpo2011」が開催された。 昨年と同様、モスクワシティーのすぐ隣、エクスポセンター見本市会場ですべてのパビリオンを使用してのロシアでも最大級の催しものである。

物価上昇のペースが著しいモスクワ

女性を並べただけのロシアの缶詰会社のスタンド。毎年、同じ場所に同じデザインのスタンドを出す。この女性たちが何を意味するのか、今年やっと分かった。この会社の最大の定番商品、オイルサーディンの缶詰をイメージしているそうだ。まあ、悪趣味と言うのか、ロシア趣味と言うのか・・・

 会場に入り空を見上げると、モスクワシティーに建設中のいくつかの高層ビルが嫌でも目に入る。

 何が嫌かというと、この景色、昨年と全く変わらないからだ。経済統計から見ると、リーマン・ショックからロシア経済は立ち直ったそうだ。

 しかし、実態経済の中で仕事をする我々から見ると、ホンマかいな? という疑問を頭から払いのけることができない。

 年明けにモスクワに戻り、スーパーに買い物に行き、大いに驚いた。1つは商品の値上がり。45ルーブルだったオレンジジュースは66ルーブル。1キロ450ルーブルで買えたロースハムは600ルーブル以上だ。

 卵、食肉、牛乳など日常の生活に欠かせないものが一挙に20~30%上がっている。次に気がついたのは、妙に売り場が広々としていること。

 よく見ると野菜を載せていた台や、その日のバーゲン品を平置きしていたテーブルがなくなり、高級酒類を鍵をかけて保管していたショーウインドーも消えている。

テロを警戒してショーウインドーを撤去

 馴染みのおばさんに、「商品が減ったから台を片付けたのか、あるいは台を置くなとでも言われたのか」と聞くと、それそれ、と2番目の理由に丸をつけてくれた。爆弾を隠せるような商品台は撤去せよ、ということらしい。

 1月24日のドモジェドヴォ空港爆弾テロのあと、警察はいろいろな場所で警戒を厳しくしているが、なかなか政府トップからはお褒めをいただけない。

 昨日は、ドミトリー・メドベージェフ大統領が自らモスクワのターミナル駅の1つ、キエフ駅構内を視察して、持ち場にいないという警官の怠慢さに怒りを爆発させたと新聞に書かれていた。

 だから保安上の理由というのも嘘ではなかろう。しかし私には、先週の小売問題セミナーで聞いたこんな話が頭をよぎる。

 このところの異常な小売業の拡大でリスティングフィーが上がり、中小のメーカーでは大手小売チェーンへの売り込みが難しくなっている、というのだ。

  世界貿易機関(WTO)加盟を目指すロシアは、不透明なリスティングフィーを無くすべく、いろんな方面に圧力をかけているが、その結果として、これまでアッケラカンとやり取りされていたリスティングフィーが地下にもぐりつつある、という指摘だ。

 このため新規に取引を始めることが難しく、従来からの納品事業者のみと仕事をするようになっている。リスティングフィーの上昇分を納品価格に反映させることは小売側も黙認。

 その結果が小売価格の上昇となって表れる。だから、現在のロシアを見て、景気が回復したと言い切ることは私にはできないのだ。