哲学や思想は、今のビジネスにも影響を与えている。

「哲学や思想なんて、何のために学ぶのか分からない」という人は多い。実のところ、学のあるところを見せるためのお飾りとしてしか学んでいない人も多い。しかし哲学や思想は、私たちの日常的な行動、発言に染みわたり、知らず知らずのうちに大きな影響を受けている。もちろん、ビジネスも。

 現実に役立つ、生きる力を身につけられる学問を「リベラルアーツ」という。これは日本語では「教養」と訳されるが、日本での教養はどうも、昔のエライ人物がどんなことを言ったかを、教科書から丸暗記してテープレコーダーのように紹介することができることを意味するに過ぎない。

 しかしそれはもちろん、生きた学問、リベラルアーツとはとても言えない。自分の生きている現実と結びついていない知識なんて、知識とは本当の意味では言えない。それはただの情報だ。知識とは、さまざまな知と知がネットワークのようにつながる、織物でなければならないのだから。

 そこで、ここでは、ビジネスの世界にも哲学や思想がいかに巨大な影を落としているのかを試しに考えてみよう。現代のビジネスマンが克服すべき哲学・思想家として2人。プラトンとデカルト。そして、現代人も見習うべき哲学・思想家として2人。ソクラテスとガリレオ。

 まずは、プラトンとデカルトが、現代を生きるビジネスマンの思考にどれほど染み込んでいるものかを見てみよう。

プラトンが招いた「勘違い」

 一代で巨大企業を立ち上げたカリスマ経営者が「ろくな後継者が見当たらない」といって嘆いている姿はよく見る光景だ。「俺みたいにリーダーを張れるやつは他にいないのか?」と、嘆きつつもちょっぴり得意げな気持ちになっている社長やリーダーは、世間にたくさん見られる。

 こうした人たちは、プラトンとデカルトが創り出した「虚像」を追いかけている可能性がある。たとえご本人がプラトンもデカルトも読んだことがなくても、知らず知らずのうちに。