5 一帯一路に秘められた戦略的意図と真の目的

 マラッカ海峡のような脆弱な海峡に安全保障対策として、結論的に述べられているのは、

(1)途上国との関係を改善して安全保障能力を向上させること、そのために国際的な安全保障協力機構を構築し、地域国との外交関係を改善し経済協力を促進すること。

(2)中国が直接面している脆弱な海峡は専門機関により自ら重点的に安全を保障すること。

 そのために指導的政策を制定し、海警局を海上安全保障を主導する国家の専門的組織とし、海上安全保障に関する危機時には直ちに対応できる態勢にすること。

 海警局と海軍の混成編制の公船艦隊を建設し、長距離の海上安全保障能力の不足を補い、大馬力で大トン数の装備と人員からなる部隊を編成すること。

(3)脆弱な海峡とその代替案を積極的に開拓すること。

 そのために、中国の国際的海上ルートのうち、距離が長く原油・天然ガスの交易ルートである欧州ルートと米・アフリカルートがともに通過するマラッカ海峡が最も脆弱であり、代替案を求めねばならない。

 そのための案としてまず、タイのクラ運河の建設がある。

 次に、陸上ルートの代替案として1990年代から欧亜をつなぐ鉄道建設を模索してきたがうまくいかなかったので、2013年に大陸橋をつなぐ"シルクロード"経済帯を提唱した。

 米国はパナマ運河を支配し太平洋・大西洋にまたがる海上交通をコントロールしている。

 これらの海上ルートへの米国の妨害に対抗するため、中国からアフリカ、ラテンアメリカ、太平洋間の主導的地位を固める必要があり、パナマ運河の代替案としてペルーからブラジルに至る鉄道を建設する案もある。