香港・旺角のドラッグストア(筆者撮影、以下同)

 これまで、アジアの旅で朝食に困ることなどほとんどなかった。中国・上海では、地下鉄駅の周辺に必ず食堂や屋台があった。シンガポールやマレーシアでも身近なところに安くておいしい食堂があった。

 筆者は、香港にもそれを期待していた。2000年初頭に訪れた香港には、朝から営業して庶民の胃袋を満たしてくれる食堂がたくさんあったからだ。中には何十年と同じ味を守る老舗の食堂もあった。

 だが、今年(2018年)4月、十数年ぶりに訪れた香港の繁華街・旺角(モンコック)は様変わりしていた。“お手軽な食堂”は姿を消し、代わりにドラッグストアが林立していたのだ。

 旺角がこれほどまでにドラッグストア天国になってしまったことの背景には、近年の不動産賃料の高騰がある。

 香港の主要な観光地の商業ビルでは賃料が高騰し、庶民相手の食堂は経営が成り立たなくなってしまった。そのためビルから追い出され、その場所に新たなテナントとしてドラッグストアが入ってきたのだ。大陸商人の“粉ミルク買い占め”や、中国大陸からの旅行客の“化粧品爆買い”などが、ドラッグストアの出店に拍車をかけた。

香港には「茶餐庁」と呼ばれる食堂が数多くある。香港の食文化を代表する場所だが、不動産高騰とともに姿を消しつつある