長寿にも関連? 日本人の腸内環境は独特だった

メタゲノム解析に便移植も、注目される細菌たちの働き

2018.06.01(Fri) 佐藤 成美
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 さらに、個人には特有の腸内細菌叢が存在し、そのバランスはかなり安定していることが明らかになっている。ヒトは無菌状態で生まれてくるが、出生すると体内に細菌が入り込み、すみつく。その後その人にとっての細菌叢が定着する。そして腸内細菌叢は年齢とともに変化し、安定した成人型から加齢とともに老人型になっていく。加齢とともに増加する細菌が老化と関わっていると考えられている。

 さらに、腸内細菌叢は肥満や糖尿病、炎症性腸疾患、自閉症などの疾患と関連することが明らかになっている。これらの疾患では健康なヒトと異なる種類の菌や組成からなる細菌叢が形成されており、腸内細菌叢の破綻が腸壁細胞に作用し、疾患に影響しているといわれる。

 マウスによる実験では、肥満マウスと正常マウスでは腸内細菌叢が異なっていた。そこで、肥満マウスの腸内細菌叢を正常マウスに移植すると、体脂肪量が増えた。

 また、2型糖尿病の研究では、人種や食事の違いにもかかわらず、2型糖尿病患者に特定の腸内細菌種の変化が見られた。

 2016年には順天堂大学で潰瘍性大腸炎の治療に、便移植による腸内細菌療法の有効性が示された。これは抗菌剤により患者の腸内細菌叢をリセットし、さらに健康な人の便から取り出した腸内細菌叢を腸に移植するというものだ。副作用の少ない便移植は腸疾患ばかりでなく、糖尿病など他の疾患の治療にも有効ではないかと期待されている。

日本人の腸内細菌叢、有能な特徴が明らかに

 近年では、科学技術の進歩によって、腸内細菌の全体像が飛躍的に解明されつつある。現在行われているのは「メタゲノム解析」といい、便から腸内細菌のDNAをまるごと取り出し、網羅的に解析する方法だ。

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サイエンスライター、明治学院大学非常勤講師(生物学)、農学博士。食品会社の研究員、大学の研究員、教員などを経て現在に至る。研究所の広報誌やサイトなどにも原稿を執筆している。著書に『「おいしさ」の科学』(講談社ブルーバックス)『お酒の科学』(日刊工業新聞社)など多数。


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