大きな賭けでもあったが、従業員と3人で夜な夜な成型技術を研究し、1年足らずでバイクの部品を受注するほどの成果を上げた。

 その後、F1カーやスーパーカーの部品に加え、航空分野では難易度の高いカーボンをチタンと接合させる技術が求められるジェットエンジンのブレード部品製作へと技術を高めていった。

 そのウチダが、福祉機器に参入した。現在、脊髄損傷者を対象とする装用したまま車椅子に乗れる二足歩行装具「C-FREX」(シーフレックス)の開発に取り組む。

歩行リハビリのしやすさを追求

スポーツカーの座席に見立てた椅子が並ぶ会議室でカーボンの魅力を語るウチダ社長の内田敏一さん。

 国内ではおよそ10万人が、脳の信号を伝える脊髄を損傷して運動麻痺を起こしており、その多くは車いすの生活を送る。

 年に約5000人もの人が交通事故や転落など何らかの激しい事故が原因で脊髄損傷を負うという。

 医療技術の発展で平均余命は飛躍的に延びたものの、損傷した脊髄そのものを治療する方法はいまだ確立されていない。

 運動麻痺を起こしても身体の機能を維持するために歩行のリハビリは重要とされ、リハビリ現場では歩行装具が使われる。

 金属を主にしたものから電動アシストまで様々な歩行装具がある中で、ウチダが開発をするのは、完全に脊髄を損傷した人を対象にしたCFRP製の二足歩行装具だ。

 主な機構は、従来の交互歩行装具のように、左右の股関節をワイヤーケーブルで機械的に連動させ、残存筋力や体重移動によって歩行をアシストするもの。

 腰からつま先までを支える外骨格構造で、腰から足のつま先まで、それぞれの構造部材にCFPRを用い、軽量かつばねのようなしなりを持たせ、運動効率の向上を図っている。

 腰を15センチほどのベルトで固定し、足の裏にあたる部分はスニーカーの中に一緒に履いてつま先までフィットさせる。

 つま先のようなばねの機能をもたせる部位にはオートクレーブ成型を、太ももなど身体の個人差がある構造部品には3Dプリンタを用いるなど、どの部位をアシストするかで素材に求められる性能が異なるため成型方法を変えている。

 現在、開発するのは「機能モデル」で、二足歩行装具として必要な機能を決めるための試作段階にある。

 最終的には、2016年にパリで開催された世界最大級の複合材料の見本市「JEC」でイノベーションアワードを受賞した「デザインモデル」への展開を目指す。