しかし、金正恩委員長が以上のシナリオを受け入れず、事態収拾ができない場合、米国は次のオプションである(3)海上封鎖、(4)空爆、(5)軍事侵攻の軍事的オプションに移らざるを得ない。

 キューバ危機の場合、(3)の海上封鎖は、四面海に囲まれたキューバには有効であった。しかし、北朝鮮は半島国家であり、陸地部分を隣接する中国との「中朝友好協力相互援助条約」(軍事同盟)そしてロシアとの「露朝友好善隣協力条約」(非軍事同盟)によって支えられている。

 トランプ大統領は、韓国訪問中の国会演説で、改めて、中国、ロシアを含むすべての国に対して国連安全保障理事会決議を履行し、外交関係の制限や貿易の停止を実行するよう呼びかけた。

 しかし、それによって決定的な成果を収めることができるかは、期待よりも懸念の方が上回ろう。

 一方、北朝鮮は、軍事境界線沿いに配備された1万3600両と言われる大砲や多連装ロケット砲をもって直ちに反撃し、韓国の首都「ソウルを火の海にする」と豪語している。

 また、大量の生物化学兵器を保有し、その使用の恐れもある北朝鮮の軍事能力は米韓が最も懸念するところである。

 したがって、中露の協力が得られず、海上、陸上からの北朝鮮包囲網が形成できない場合、米国は、最終的に(3)海上封鎖、(4)空爆、地上からの(5)軍事侵攻のオプションを総動員する必要に迫られよう。

 そして、北朝鮮が軍事境界線沿いに配置した大砲や多連装ロケット砲の一挙制圧、核ミサイルの排除とその関連施設の破壊、斬首作戦、陸海空軍基地や地下に造られた攻撃拠点・兵器弾薬庫の破壊など、北朝鮮全域に及ぶほどの全面攻撃を行うことは避けられないのではないだろうか。

 その結果としての、米国が隣人となりかねない地政学的最悪の条件を、中露は受け入れることはできず、そのため、北朝鮮に対して何らかの形で軍事支援を行わざるを得ない状況に追い込まれよう。

 一方、米国は、中露との軍事衝突を回避することは必須の条件であり、したがって、中露との間で、米国の軍事行動は核ミサイルの排除とその製造能力の破壊が目的で、北朝鮮の国家破壊・消滅を目的としないことを秘密裏に確約して、両国の介入を阻止する必要があろう。いわゆる、制限戦争戦略である。

 キューバ危機では、海上封鎖という選択肢を採用したが、それは大統領が次に打つ手を自由に選べることと、フルシチョフ首相にも選択の余地を残す利点があり、海上封鎖による米国の意思と力の誇示が、ソ連にミサイル配備について考え直す機会を与えるとの理由からであった。

 しかし、北朝鮮のケースでは、段階的に軍事的手段をエスカレートして行くというオプションは採りにくく、そのため、戦略に余裕や柔軟性を欠くことが大きな問題であり、その点については、米朝ともに、特に慎重な判断と行動が求められる。