可能な選択肢(オプション)と起り得るシナリオ

 前述のとおり、ケネディ政権で挙げられた選択肢(オプション)は、

(1)ソ連に対する外交的圧力と警告および頂上会談(外交交渉のみ)
(2)キューバのカストロ首相への秘密裡のアプローチ
(3)海上封鎖
(4)空爆
(5)軍事侵攻
(6)何もしない(しばらく成り行きを見守る)の6つであった。

 そして、最終的には、海上封鎖が採用され、それがうまく行かなかった場合は、空爆もあり得るというものであった。

 トランプ大統領が「すべての選択肢がテーブルの上にある」と述べた通り、キューバ危機における米国の選択肢は、すべて検証されたものとみられる。

 そのうえで、北朝鮮問題はすでに現在進行中であるが、トランプ政権は、13日間のキューバ危機より時間の余裕があることから、遅効性ながら、当時のオプションにはなかった「経済制裁」を重視し、国連を通じた国際社会や中露への働きかけなどの外交交渉を交えた解決策を模索している。

 経済制裁は、じわじわと成果を挙げている半面、北朝鮮に対する中国やロシアの支援が続けられていることから、それをもって、完全に目的を達成できるかどうかは、はなはだ疑わしい。

 そのため、「常軌を逸していて、予測不可能」を装う「マッドマン」戦略のトランプ大統領ではあるが、軍事衝突を回避する努力を尽くしながらも、最終的に「軍事力を使いたくはないが、あり得ることだ。そうなれば北朝鮮にとって悲劇の日となる」と警告しており、北朝鮮はその警告を真剣に受け止めなければならないだろう。

 いま、米朝の関係は、いよいよキューバ危機における一触即発の段階に近づきつつある。そのような時間切れの段階にあって、ソ連のフルシチョフ首相は、キューバからのミサイル撤去を受け入れる代わりに、キューバを攻撃しないという約束を取りつけるという決断を下した。

 そして、自国に突きつけられていたトルコのミサイル撤去という戦略的成果も獲得した。

 当時のフルシチョフ首相の立場を現在の北朝鮮の金正恩委員長に見立てると、金委員長は、核ミサイルの放棄を受け入れる代わりに、米国が北朝鮮を攻撃しないという約束を取りつける。

 同時に、在韓米軍の撤退を約束させ、平和協定の締結に漕ぎ着けるということになろう。

 つまり、キューバからのミサイル撤去後、米ソ間には平和共存とデタント(緊張緩和)が進展し、結局のところ、そのことが、ソ連の国際安全保障環境・戦略環境を格段に改善させる大きな転機となったことから連想される、問題解決のシナリオである。