すでにミサイルはキューバに持ち込まれ、臨戦態勢にあったため、選択肢から排除された(5)の軍事侵攻はもちろんのこと、限定的であれ(4)の空爆を行った場合、キューバからの報復攻撃の可能性は大いに存在した。

 実際のところ、カストロ首相がソ連の反対を押し切り、感情に任せてそのような報復行動に出る確率は非常に高いと見られていた。

 そして、海上封鎖であれば、大統領が次に打つ手を自由に選べることと、フルシチョフ首相にも選択の余地を残す利点があり、海上封鎖による米国の意思と力の誇示が、ソ連にミサイル配備について考え直す機会を与えるとの理由に支持が集まった。

 加えて、ケネディ司法長官の「会議で空爆と結論を出しても大統領は受け入れないだろう」との発言が後押しし、まず海上封鎖を実行し、事態が進まない場合は空爆を行うという案でまとまった。

 結局、ケネディ大統領は、マクナマラ国防長官などスタッフの意見や助言を取り入れ、海上封鎖という選択肢を採用した。

 そして、海上封鎖に併せて、軍事的威嚇、秘密裡の裏取引を含めた外交ルートによる交渉、国連や中立国の仲介など、核戦争を回避するあらゆる努力が行われ、「キューバ危機」は回避されたのであった。

キューバ危機から北朝鮮問題を考える

全般の動き

 ケネディ大統領は、ソ連の攻撃用ミサイルのキューバ配備が「西半球に対する核攻撃力を提供」し、「全米州国家の平和と安全に対する明白な脅威」であると認識していた。

 それを阻止するため、海上封鎖によって米国の意思と力を見せつけ、全面核戦争までを覚悟し、断固としてソ連に攻撃用ミサイル基地の撤去を要求した。

 その意志と力、そして大統領の覚悟がソ連の妥協を促し、危機の克服に成功した。

 いま、ドナルド・トランプ大統領は、北朝鮮が弾道ミサイルに搭載可能な小型核弾頭と大気圏再突入技術を獲得し、米本土に届くICBMの完成が目前に迫っていることを、ケネディ大統領と同じように、米国の生存と安全を脅かす「最も重大な脅威」と認識している。

 そして、トランプ大統領は、北朝鮮に対し核ミサイル計画の「完全な、検証可能な、かつ、不可逆的な放棄」を要求し、そのため、当面、経済制裁による圧力を加えつつ外交的解決を優先する姿勢を強調しているが、最終的には軍事力の行使を辞さない構えである。

 キューバ危機におけるケネディ大統領と、北朝鮮問題におけるトランプ大統領の置かれた状況は、きわめて似通っており、ケネディ政権のキューバ危機対応は、トランプ政権の北朝鮮問題対応に大きな示唆を与え、あるいは影響を及ぼしているのは間違いないであろう。

 そこで、ケネディ政権のキューバ危機への対応を踏まえ、トランプ政権の北朝鮮問題への対応の予測や留意点について考えてみることにする。