また、瀬戸さんは子供たちだけでなく、ここで暮らす大人たちのための場作りも意識している。

「大人たちのサードプレイス(自宅や職場と離れた第三の居場所)を作りたいんです。ママが学ぶための場や、パパが仕事帰りに訪ねることができる場所を作りたいですね」

瀬戸さん主催のアイデアソンや座談会などのワークショップの様子。学生、役場職員、議員、子連れの町民など町内外から様々な人が集まる
新生児を抱く大人と一緒に発表する学生

「選択」は「観察」があってこそ

 風雲児のように現れ、アメリカから土佐に新しい風を吹き込む瀬戸さん。子供たちに接するとき何よりも大切にしているのは、「自分で選択する力を育む」ということだ。そのためにも大事なのは「観察すること」だという。昆虫博士らしい視点だと言えるだろう。

「生物の世界をのぞいていると社会の縮図を見ているようで楽しいんです」

 瀬戸さんは笑う。

「見ること、観察することで気がつくことは、必ずあります。見て、気がついて、そして選択をするという力を身につけてほしい」

「田舎」への移住は想像以上に苦労を伴うものだ。「移住を促進している地方へ引っ越したら、誰かが支援してくれるわけでもなく、大変だった」と言う人に会ったこともある。結局、どこにいても、そこで何をするかは本人次第ということだろう。どんな状況でも、瀬戸さんは笑いながらどんどんと進んでいく。その笑顔が多くの人を巻き込む原動力と言えるのかもしれない。

 

瀬戸 昌宣(せと・まさのり)
1980年東京生まれ。農学博士(農業昆虫学)。桐朋高校でバスケットボールに打ち込む傍ら、オーストラリアに留学。大学時代の米国留学を経て、米国コーネル大学にて博士号を取得。コーネル大学ニューヨーク州立農業試験場で博士研究員として研究と教育に従事。2016年から土佐町役場に勤務し、地域の教育に参加。2017年5月にNPO法人SOMAを設立し、地域の教育の企画・運営をしている。林業を教育素材として、総合的な学習ができる「杣の学校」を設立準備中。