私の在籍している博報堂生活総合研究所は、1981年の設立から現在に至るまで、「生活者発想」に基づいて生活者の行動や意識、価値観とその変化を見つめ、さまざまな研究活動を行ってきました。
前回に引き続き、世の中で生じている事象に対して、研究所に蓄積された研究成果やそれらに基づく独自の視点により考察を加えてまいります。読者の皆様にとって、発想や視野を広げるひとつのきっかけ・刺激となれば幸いです。
子どもは変わった? 変わっていない?
「最近の子どもは外で遊ばない」「最近の子どもは食生活が乱れている」などという具合に、「最近の子どもは・・・」というパターンの言説を目にすることがあります。特に、子どもにまつわるインパクトの強い事件や出来事があったとき、この手の話はよく語られがちです。
それを聞いて「確かにそうだ」と思う方もいれば、「ほんとにそうなのか?」と疑問を抱く方もいらっしゃるでしょう。なにしろ、自分自身が子どもだった時代の意識にも影響されるため、「子どもは変わった」「変わっていない」は実に曖昧かつ主観の入りやすいテーマであるようです。
私たち博報堂生活総合研究所では、小学4年生から中学2年生の子どもたちを対象として、生活行動や意識、価値観の変化を長期スパンで調べる「子ども調査」を、1997年、2007年、2017年と10年おきに行ってきました。この20年間、日本では少子化の進行、共働き世帯の増加、ゆとり教育と脱ゆとりへの転換、デジタル環境の向上、東日本大震災の発生など、さまざまな事象が生じてきました。こうした中、果たして子どもは「変わった」のでしょうか、それともあまり「変わっていない」のでしょうか。
1997年から2017年まで継続して聴取している「子ども調査」の質問項目は約600項目。そのうち、1997年と2017年のスコアを比べた時に、統計上「変わった」と言えるほどスコアが変化したものが約6割、統計上「変わった」とは言えないものが約4割となりました。