参加5原則の問題

 参加5原則は以下の5点であるが、今回の派遣から撤収までの経緯に鑑み、参加5原則の妥当性こそ真剣に議論し、必要ならば修正すべきであろう。

①紛争当事者間で停戦合意が成立していること
②紛争当事国(紛争当事者)が我が国の平和維持隊への参加に同意していること
③平和維持隊が中立的立場を厳守すること

④以上の原則のいずれかが満たされない状況が生じた場合、撤収することができること
⑤武器の使用は、要員の生命等の防護のための必要最小限を基本。安全確保業務及び駆け付け警護の実施にあたり、自己保存型及び武器等防護を超える武器使用が可能

 今回、治安との関係で問題になったのが「①紛争当事者間で停戦合意が成立していること」である。

 最近の平和維持活動においては、内戦に伴う「住民の保護」が主たる任務となることが多く、紛争当事者間で停戦合意が成立していなくても、「住民の保護」の任務を遂行することになる。

 自衛隊だけが、「停戦合意が成立していないから撤収します」と言えば、平和維持部隊を構成する他国部隊などから批判されるであろう。停戦合意を5原則から外すか否かも含めて議論すべきだろう。

 また、⑤の武器使用権限のさらなる緩和が必要なのか否か、憲法第9条の交戦権との関連での議論もすべきであろう。結果として憲法改正の議論をすべきであろう。

いわゆる「一体化」の問題

 伊勢崎教授の一体化に関する意見と政府の解釈は違うが、どちらの解釈が適切なのかは議論すべきであろう。伊勢崎教授の意見によると、自衛隊はまぎれもなく「PKF(Peace Keeping Forces)の工兵部隊」として活動してきた。

 歴代の自衛隊の施設部隊は、PKFの工兵部隊であり、現場ではずっとその扱いであった。自衛隊はPKFであるだけでなく、PKFという多国籍軍としての「武力行使」に“一体化”して活動する。当たり前である、一体化しなかったら、多国籍軍としてのPKFは成り立たない。

 施設部隊として送られた自衛隊が、基地に閉じこもり、全く何もしなくても、他のPKFの部隊が交戦すれば、自衛隊も自動的に交戦主体としてみなされる。国際法から見れば、自衛隊はじっとしていても、PKO参加の時点で、静的に、「武力の行使」と一体化する*3

 この問題も9条2項が禁じる交戦権の問題と関連し、憲法を改正することにより解決できる問題である。

筆者の意見

 今回の安倍首相の南スーダンPKOに従事する陸上自衛隊の撤収に関する英断を高く評価する。

 南スーダンからの撤収によって自衛隊が参加するPKOはなくなるが、次に参加するPKOを過早に探したりするのは適切ではない。

 今やるべきことは、国際平和協力業務のみならず、我が国の安全保障全般に大きな影響を及ぼしている憲法第9条第2項の改正について議論をし、努めて早く改正することである。

 憲法の改正がなされるまで、自衛隊は、我が国が直面する内憂外患に鑑み、主として国内任務に専念すべきである。ただし、例外的な国外任務として、アジアで発生した大震災(地震、津波など)に対する積極的かつ短期の災害派遣活動を重視して実施すべきである。

 最後に、自衛隊に対し、この5年間の南スーダンでの活動に感謝するとともに、5月末の無事の帰国を祈念してやまない。

*3=自衛隊「海外派遣」、私たちが刷り込まれてきた二つのウソ~ゼロからわかるPKOの真実、現代ビジネス