世界は自国通貨を安くして輸出競争力をつけようと必死になっている。この戦争に宣戦布告したのは米国である。バラク・オバマ大統領が輸出倍増計画を掲げ、弱いドルへ誘導したことで、それまでは地域紛争程度だったものが世界大戦へと発展した。
世界通貨戦争、宣戦布告したのは米国
この戦争では、残念ながら日米安全保障条約なるものは存在しない。自分の国は自分で守る以外に方法はないのである。
しかし、65年間という2世代分に相当する長きにわたって米国の庇護を受けてきた日本には国を守るという意識と意欲がほとんど失われかけている。
そこにきて、庇護してくれると思っていた米国が戦争を仕かけているのだ。たまったものではない。
英フィナンシャル・タイムズ紙の「世界的な通貨バトルに米国が勝つ理由」の要旨は、米国が明らかに勝てる戦争についに打って出たというものである。
ついにというのは、米国を頂点とする世界秩序を守るために世界で唯一の覇権国である米国は、これまでそんな戦いができなかったが、そのタガもいよいよ外れてしまったという意味である。
もちろん、為替介入による露骨なドル安誘導ではない。
ただ、景気回復のペースが鈍く、何としてでもデフレを回避したい米国は、とことん金融緩和を続ける。
となれば、必然的にドル安になるが、FT紙の言葉を借りれば米国はいま、「その政策が諸外国にどんな影響を及ぼすかなど、この際お構いなし」なのだ。
勝敗は初めから決まっている戦い
米国が仕かけた通貨戦争は戦う前から米国の勝ちが決まっている。さればどのような終戦を迎えるのか。
FT紙は「議論すべきは世界各国が飲む降伏条件、つまり、世界中の名目為替レートと国内政策について必要とされる改革だろう」と言う。
円とドルのレートは1995年につけた1ドル79円代に急速に迫りつつある。そうこうしているうちに、あっという間に超えてしまう可能性もある。