「加藤さん、彼が獲ったよ。今晩はお祝いだ。出てこられる?」
10月8日15時過ぎ、グーグルのチャット機能「G-Talk」に中国語で浮かび上がってきた。北京のリベラル派ジャーナリストからだ。何を指しているのかはすぐに分かった。
劉暁波氏の受賞をこっそり祝う中国の有識者たち
「おめでとう。貴国の健全な発展を願うすべての人民で勝ち取った結果だ。いま上海にいる。残念ながら集いには参加できない。みなさんによろしく伝えてくれ」とだけ返した。
MSNメッセンジャーに眼を向けると、続々とメッセージが入ってきていた。
「やっぱり彼だった」
「未来に希望が見えてきた」
「中国人民は負けない」
「最後には正義が勝つんだ」
「世界は中国を見捨てなかった」
影響力のある人は阿吽の呼吸でコミュニケーションする
ワンフレーズ。多くは語らない。学者やジャーナリストを中心に、モノ言う人間の携帯電話やパソコンは、中国人、外国人を問わず、基本的には視られている。
固有名詞は極力使わない。「阿吽の呼吸」こそが、中国で政治を議論するうえでのキーワードである。
中国人人権活動家、作家の劉暁波氏がノーベル平和賞を獲得した。自然科学を含め、中国在住の中国人としては初めての受賞になる。
ノルウェーのノーベル賞委員会は「中国での基本的人権を求める非暴力の闘い」を評価した。中国外交部は当日夜、「平和賞を汚すものだ」と激しく反発し、ノルウェーとの関係悪化を明示する談話を発表した。