尖閣諸島での中国籍漁船と日本の海上保安庁巡視船との衝突に端を発する一連の問題で、日中両国間の緊張関係が高まっている。

 あくまで強気の姿勢を崩さない中国側に対して、日本側の対応は外交的敗北と見る観測もある。

 領海を巡る諸問題の微妙なバランス、また2008年の金融恐慌以後も成長を続ける経済に基づく自信、拡大する人民解放軍とりわけ海軍力など、中国が強気の姿勢を取る背景には様々な事情が存在するようだ。

 だがこれらについては別の論考に譲って、ここでは中国の科学技術、イノベーションが持つ「ある特徴」を考えてみたい。というのもこの観点から見る時、日中関係は別の横顔を見せるように思うからだ。そこには意外な第3項が介在する。欧州だ。

発展させられない国、中国?

印刷機を発明したヨハネス・グーテンベルク(ウィキペディアより)

 「紙」「火薬」「羅針盤」。この3者に共通するものは何か?

 いずれも比較的古い時代に、中国で発明されたものであると知る人は多い。

 しかし「紙の発明」と「グーテンベルク印刷機」以来の書籍や新聞雑誌網の発達とを見比べる時、後者の舞台がもっぱら「中国以外の場所」であることに私たちは気づく。

 あえて「中国以外」と回りくどい表現を取ったのは、中東イスラム文化圏の役割が大きいからだ。

 あるいは「火薬の発明」と「ピストルや銃、大砲」ではどうだろうか?

 現象を最初に見つけたのは中国人だ。しかしそれを兵器として大きく発展させたのは「中国以外」の文化圏だ。「羅針盤」も同様だ。

 中世、世界の海の覇者はイスラムだった。それが近世以降、西欧に取って代わり、南北アメリカへの到達や世界周航に「羅針盤」は決定的な役割を果たした。だがそれを精緻に発達させたのは、そもそもの発明元である中国文化圏ではなかった。

 ここから、ある図式が見えてきはしないだろうか?