日中関係は再び試練に直面している。これまで日中は、歴史認識の違い、戦争の加害者と被害者という立場の違いについて、共通した認識を探ってきた。だが、度重なる日本の政治家の靖国神社参拝によって関係が悪化し、その都度、修復が繰り返されてきた。

 歴史認識を巡っては日中が対立するだけでなく、東アジアの他の国々も日本に対して正しい認識を持つよう求めている。

 しかし、領土と領海の問題は完全に2国間の問題である。今回、尖閣諸島(中国語名:釣魚島)の領有問題および中国漁船の拿捕と船長勾留について日中が激しく対立し、これまで以上に関係が悪化した。事件は表面的にトーンダウンしているように見えるが、その傷跡は予想以上に深い。

ますます深刻になる日中の不信

 筆者は1年前からほぼ毎週のように中国の中央テレビ(CCTV)に出演し、日本の政治と経済などのトピックスについて解説してきた。中央テレビの番組の中で、海外にいる中国人エコノミストを招いて現地情勢を解説しているのは日本に関してだけだそうだ。中国が日本を重視していることの表れだろう。

 また、以前は中国で講演を頼まれると、ほとんどボランティアとしての講演だった。しかし、今年、北京で日本経済について講演したところ、講演料が支払われた。主催者の社会科学院に聞いてみたら、日本関連の研究予算が増えたという。

 確かに、中国は日本を重視し、日本に関する研究を強化している。しかし、中国人研究者から見ると、日本の政治と経済は分かりにくい。

 1つは、日本の指導者はなぜ頻繁に代わるのか。もう1つは、バブルが崩壊して20年も経過したのに、なぜちっとも立ち直れないのか。どんなに深刻な構造問題でも20年間もの歳月をかければ傷跡は癒やされるはず、と思われている。

 一方、日本人にとっても中国という国も不可解なところが多い。

 最も違和感を覚えるのは価値観の違いであろう。民主主義の日本と違って、中国は依然として社会主義の国である。それにもかかわらず、中国経済はどんどん成長している。自由な市場経済と独裁政治とのミスマッチがなぜ起きないのか、不思議で仕方がないはずだ。

 日本人は中国という国を理解するために、多大な努力を払っている。本屋に行けば分かる。中国に関する本の数は、外国人が想像できないぐらい多い。それを見ると、日本人は実に中国を多面的に考察している。毎日の新聞やテレビなどのマスコミの報道でも、中国関連のものは圧倒的に大きなウェイトを占めている。