前回(「営業強化のスタンスを見直そう、サービスはお客様と一緒に作るもの」)に引き続き、製造業とサービス業の特徴を比較することで、サービス向上や営業強化における大きな課題をあぶり出したいと思います。

 今回は、東京大学の藤本隆宏教授が提唱されている、産業は情報を“転写”するビジネスであるという「情報転写モデル」をヒントにしてみようと思います。この情報転写モデルでは、製造業では「製品の設計情報を素材に転写することで価値を生み出している」とされています。つまり、自動車メーカーであれば、開発部門が作った自動車の設計情報を、生産部門がプレス機や金型を使って鉄板に転写して部品をつくり、それを組み上げて自動車を製造して、価値ある自動車をお客様にお届けしているということになります。

 これに対してサービス業も同様に、「サービスの設計情報をサービススタッフに転写することで、価値を生み出している」と捉えることができます。また、営業であれば、「営業の設計情報を営業スタッフに転写することで、価値を生み出している」ということですね。

 モデルとしては、製造業とサービス業は全く同じです。しかし詳しく見てみると、大きな違いがあることに気づきます。

サービスや営業は転写が命なのに・・・

 「転写」に着目してみましょう。製造業では設計情報をモノに対して転写します。自動車であれば鉄板に転写してボディーのパーツをつくります。その転写スピードは秒単位で、短時間のうちに大量で均質な転写が可能です。しかも、一度転写したら安定的にその形を維持することができます。自宅のガレージに停めてある自動車が、ある朝鉄板に戻ってしまった、ということはあり得ないですよね。