ノーベル賞級の業績をコンスタントに挙げる、ジョン・バーディーンのような物理学者の仕事には、もう1つ大きな特徴があります。

 あえて言えば「歴史性」とでも言えばいいでしょうか。

 解くべき問題がどのようにアプローチされ、またどんな実験事実が新知見として得られてきたか、そうしたことに敏感であるのが、クリエイティブな人の大きな特徴になっていると思います。

 ジョン・バーディーンは1908年、日本で言えば明治41年生まれで、彼が3歳の1911年、オランダで超伝導現象が発見されました。

 当初は「抵抗が全くない!」とびっくりされた超伝導現象でしたが、さらにその驚異的な本質が明らかになるには、次世代のイノベーションが必要不可欠だったのです。

 また逆に言えば、新しい技術が開示した知見に、最初に反応した人が、一番大きな魚を釣り上げてもいる。そういう意味で新知見に「ミーハー」であることは、クリエイティブにはとても大事なことかもしれません。

 逆に、すでに皆の手垢がついたものに、後ろの方からぞろぞろとついていくくらい、クリエイティブと縁の薄いミーハーはないのですが、現実にはそういう層の方がはるかに厚いわけで、そうした研究者人口が様々な経済を支えていたりもして・・・なかなか微妙です。

巨大ヘリウム液化装置がもたらした新知見

ヴァルター・マイスナー(ウィキペディアより)

 北ドイツ、ベルリンで1882年に生まれたヴァルター・マイスナーは初め機械工学を学びますが、ミュンヘンで物理学者マックス・プランクに学んで基礎物理学に興味を持ちます。マイスナーが29歳のとき、オランダで超伝導現象が発見されました。

 故郷ベルリンで物理工学院に職を得たマイスナーは低温物理に興味を抱き仕事を進めます。新たな超伝導物質の発見、高温超電導体のハシリのような物質の探求などで成果を上げ、40歳を過ぎてからは、当時世界で3番目に大きなヘリウム液化装置を製造し始めます(1922-25)。

 マイスナーが51歳のとき、彼は学生のロベルト・オクセンフェルトとともに顕著な現象に気がつきます。磁石を備えた低温実験装置で金属に磁場をかけたまま冷却していくと、金属が超伝導状態になったとたんに、金属内部の磁場が外に押し出されてしまう(完全反磁性)という性質を示すのです。

 分かりやすく言えば、通常の状態では重い金属が、超伝導状態になると内部の磁場を排除して浮く、つまり「浮上」するわけです。公開の動画がありましたのでリンクしておきます。

 この動画では浮いている方が磁石で、下で冷却されているのが超伝導体ですが、浮上の現象は同様です。